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【独占インタビュー】「Made In Japan」日本ウイスキー界に新しい風を吹かせる吉田電材蒸留所とは<第2弾>

2023.04.07 / 最終更新日:2024.04.20
【独占インタビュー】「Made In Japan」、日本ウイスキー界に新しい風を吹かせる吉田電材蒸留所とは<第2弾>

日本の高度経済成長を「モノづくり」で支えた技術力と情熱をウイスキー造りに注ぐ、吉田電材蒸留所。

今回は全く異なる異業種からの参入をし、日本初のクラフトグレーンウイスキー専業の蒸留所として「正直でち密な技術のウイスキー」を造る吉田電材蒸留所へ独占インタビューを行ったのでその様子をご紹介します!
今回は、前回のウイスキー事業の起源やMISSIONをお伺いした第1弾に続く第2弾!

第2弾ではグレーンウイスキーの製造やジャパニーズウイスキーに対する熱い想いに焦点を当てていきます!

日本で唯一クラフトグレーンウイスキー専業の蒸留所として行う設備についてや、100%国産の原酒を目指す吉田電材蒸留所だからこそ思うジャパニーズウイスキーに対する想いをお伺いしています!
ぜひお楽しみください!

併せてお読みください!

吉田電材蒸留所とは

吉田電材蒸留所は2022年3月26日に日本初のクラフトグレーンウイスキー専業の蒸留所として設立、同月30日にウイスキー製造免許取得しました。
昭和15年から80年以上にわたって「日本のモノづくり」に貢献してきた吉田電材工業の技術力と情熱を、「ジャパニーズウイスキーをもっとジャパニーズウイスキーにする」というMISSIONを掲げ現在はウイスキー造りを行っています。

会社名 吉田電材蒸留所(吉田電材工業株式会社)
取締役社長 松本 匡史 様
本社所在地 新潟県村上市宿田344-1
電話番号 0254-75-5081
蒸留所見学 見学についてはこちらから

日本初のクラフトグレーンウイスキー専業の吉田電材蒸留所

吉田電材蒸留所の設備とは

グレーンウイスキーにとって特徴的な設備とは

Dear WHISKY:
グレーンウイスキー専業の蒸留所ならではの設備などはございますか?

松本さん:
硬い穀物でも粉砕できるハンマーミルです。
モルト蒸溜所ではローラーミルというミリングマシンを使用していますが、現在製造しているグレーンウイスキーの元となる穀物のデントコーンやライ麦は大麦麦芽より硬いものが多く粉砕することができません。

そのためこの蒸留所ではハンマーミルを使用することにより、デントコーンはもちろん、それ以外の穀物を粉砕することができる設備が整っています。

Dear WHISKY:
ハンマーミルを使用する理由は穀物の硬さゆえなのですね!他に特徴的な機械はありますでしょうか?

松本さん:
他にはクッカーという機械を使用しているということが特徴です。

グレーンウイスキーは仕込みから蒸留まで、粘度がかなり高い「おかゆ」のような「マッシュ」の状態で加工を進めていくので、強力な攪拌機を装備しており仕込み中は何度も温度を上げたり、下げたりする必要があります。

モルト蒸溜所と比べると綺麗な麦汁をとらないためろ過板が付いていないことも異なる点です。中間製品の状態が異なるからこそ設備もそれに適したものを使用しています。

Dear WHISKY:
グレーン穀物ならではですね!ちなみに蒸留器は何を使用していますか?

松本さん:
Kothe社のハイブリッドスチルを使用しております。

バーボンに限らず多種多様な原料を使用したいと考えており、よりグレーンウイスキーに適した設備で造っていきたいという気持ちが強かったので、実績が多くあるハイブリッドスチルを選択しました。

この蒸留所のハイブリッドスチルは、シカゴにある世界的に有名な「KOVAL蒸溜所」とほぼ同じもので、立ち上げ製造指導にはKAVAL蒸溜所のCEOであるのロバートバーネッカーさんも駆けつけてくれました。

Dear WHISKY:
使用している設備も様々で特徴が多いですね!グレーンウイスキーは穀物を複数使うことが出来ると思うのですが、こちらも専用の設備などを導入しているのですか?

松本さん:
ハンマーミルはメーカーと独自に開発したものを使用していています。吉田電材蒸留所の場合は原料の受けタンクを3つ導入しております。この3つそれぞれがロードセルといって重量計になっています。

そのため好きな原料を自由に組み合わせて、オリジナルの重量配合でブレンドすることができます。

グレーンウイスキーだからこそ苦労したこと

Dear WHISKY:
グレーンウイスキー造りだからこその難しさはございましたか?

松本さん:
まずはやはり、なによりも身近にクラフトグレーンウイスキーの知見を持つ方がいなかったことです。

クラフト蒸溜所でグレーンウイスキーを専業にしたのはこの蒸留所が初めてですし、ハイブリッドスチルでの立ち上げを経験している人も日本では多くありません。

しかし試験蒸留免許取得から約1年にわたり、ヘッドディスティラーの北村による研究開発、ロバートバーネッカーさんやキリンの名誉ブレンダーの早川健さんにご指導いただき、何とか乗り越える事ができました。

Dear WHISKY:
ハイブリッドスチルを使用することにはどんなメリットがあるのですか?

松本さん:
まず強力な撹拌機を装備するなど構造的に、粘度が高く焦げ付きやすいマッシュでも蒸留することができるので、蒸留管理などがポットスチルより優れていると思います。マッシュを蒸留するときに、特に気になるのが焦げ付きの問題だからです。焦げは原酒の味に大きく影響するので、実績のある設備は安心感があります。

さらに、ハイブリッドスチルでは酒質のコントロールがしやすいことも魅力です。

この蒸留所では様々な穀類を使用しますので、その穀物の特徴ある香りを引き立たせることができるように、精留塔のカラム段数を変更することでアルコール度数をコントロールしたり、細やかな温度管理によって軽やかな酒質から重たい酒質など様々な酒質を表現をすることができます。

Dear WHISKY:
グレーンウイスキーだとアルコール度数の管理が非常に大事になってくるのですね。

松本さん:
その通りです。特にグレーンウイスキーは様々な原材料を使用することになるので、原材料や配合、または求める酒質ごとに製造の設定を変えなくてはなりません。

その点ハイブリッドスチルでは、精留塔にある7つのカラムの開放、閉鎖によって蒸留のアルコール度数をコントロールし、原材料や配合、求める酒質にあった設定で蒸留することができます。

やはりハイブリッドスチルの魅力はこのコントロールの幅があることですね。

Dear WHISKY:
難しいことが多いからこそ、グレーンウイスキーに特化した設備を導入しているのですね!

松本さん:
グレーンウイスキーは非常に難しいことも多く苦労はありますが、独自の設備を使用することで原酒の可能性を無限大にすることが出来ると思っています!

特徴的なハイブリッドスチル

吉田電材蒸留所の取り組みについて

原料だけではない国産への想い

Dear WHISKY:
国産100%を目指すというところで今後は原料だけではなく樽なども国産を目指すのですか?

松本さん:
樽に関してはまだ目途は立っていないのですが、やはり国産で行っていきたいという気持ちはあります。ただ、樽を造るための木材はナラ材が一般的で、日本だとミズナラになるのですがこのミズナラの樽は希少性が高く非常に高騰しています。

さらに樽に加工できるミズナラの木材は極めて少なく、そういう意味では国産の木材を使用していくというのはすぐではなく中長期的な目標です!

Dear WHISKY:
将来的には国産の木材というのも視野に入れているのですね!

松本さん:
そうですね!現在は世界的なウイスキーブームで樽が引っ張りだこの状況です。実は初めにアメリカンホワイトオークの新樽を180個仕入れたのですが、そのあと新樽が買えていない状況が続いています。

しかし新樽の他にもシェリーカスクやワインカスクなど、様々な樽の仕入れをすすめていき多種多様な原酒を造っていきたいと考えております。

Dear WHISKY:
樽を仕入れること自体が現状厳しい状況なのですね。

松本さん:
ただそのような状況下でも、ありがたいことに別の蒸溜所の方の繋がりなどもあってなんとか樽を確保することができる状況です。弊社の榎本の繋がりで仕入れることもあります。

榎本さんが想う吉田電材蒸留所のウイスキーの味とは

Dear WHISKY:
先ほど榎本さんの繋がりでとのお話がありましたが、どのような繋がりがあるのでしょうか?

榎本さん:
私はもともと新潟のバーでバーテンダーをしていました。様々な人にお越しいただく中で、お酒関係の人も多くいらっしゃいました。

そのためその方たちに樽を分けてくれないかという話などをしました。

松本さん:
樽が調達困難だからこそ、入手できる様々な種類の樽を使用して色々試してみたいと思っています。
余談ですが、私自身もそちらのバーにたくさんお伺いしています!非常に雰囲気もお酒も良いところですよ。新潟にいらしたらぜひ行ってみてください!

Dear WHISKY:
バーにもぜひお伺いさせていただきたいです!バーテンダーを務めていた榎本さんからみて、吉田電材蒸留所のグレーンウイスキーはどのように映りますか?

榎本さん:
先日、とあるテキサスバーボンの原酒(ニューポッド)を飲む機会がありました。
その原酒は吉田電材蒸留所で造っているグレーンウイスキーで使っている原酒がほとんど同じものでした。しかしこちらで使っている

設備や造り方の違いはあれど、弊社のウイスキーは北海道産のデントコーンのフレッシュな甘みを強く感じることができました。

吉田電材蒸留所で造るウイスキーはこれからも多くの変化を重ねてより美味しく・深い味わいのウイスキーになると思います。

農家の方との協働の将来像とは

Dear WHISKY:
農家の方との取り組みを進めている中で、すでにお米のウイスキーは始まっているのでしょうか?

松本さん:
本設備ではまだ行っていないのですが、ちょうど試験免許を取った方の試験用設備で行い始めました。

グレーンウイスキー用の設備であることの強みを活かした製品を現在開発中で、将来が非常に楽しみです。

Dear WHISKY:
新潟の農家の方だけではなく、これからは全国の農家のように広げていくのですか?

松本さん:
そうですね。新潟の農家の方々だけでも非常に嬉しいのですが、国産の原料というところで全国の農家のみなさんと協働していきたいという気持ちがあります。

そして農家のみなさんとともに、国内だけではなく世界の方々にも「国産のウイスキーといえば」と思っていただけるようなウイスキーを目指していきたいですね。

セールス&マーケティング部チーフの榎本さん

吉田電材蒸留所が見据える未来とこれからへの想いとは

グレーンウイスキーの可能性を広げたい

Dear WHISKY:
吉田電材蒸留所が見据えている未来とは何ですか?

松本さん:
「ジャパニーズウイスキーをもっとジャパニーズウイスキーにする」という根は変わりません。

しかしそれだけではなく、グレーンウイスキー専業蒸留所として、グレーンウイスキーの可能性を広げていきたいです。

日本でのグレーンウイスキーのイメージは、あくまでブレンデッドウイスキーにおけるモルトウイスキーの相方として、安く大量生産される原酒のイメージがあるため、味わいに対する評価はあまり高くないのが現状です。しかし近年グレーンウイスキーがリリースされていたり、グレーンウイスキーへの可能性や期待値なども高まってきていると感じてます。

私たちも味わい深く世界中から愛されているウイスキー造りを通じて、様々な味わいのあるグレーンウイスキーを提案し、ジャパニーズウイスキーの文化を盛り上げていきたいと思っています。

Dear WHISKY:
グレーンウイスキーの概念を変えるというのは、可能性を広げるだけではなくウイスキー業界に変革が起きるかもしれませんね!

松本さん:
国内のモルト蒸溜所への原酒供給に関しては、単なるサイレントウイスキーというだけではなく、モルトウイスキーの相方として付加価値をつけていけるようなグレーンウイスキーを造ることが理想です。

個性的なモルトウイスキーをまろやかに飲みやすくするだけではなく、ブレンドすることでモルトの違った一面を表現し、味わいにプラスできるようなグレーン原酒ができたら最高ですね!

ウイスキーに対する想いとは

Dear WHISKY:
お二方にとってウイスキーとは何ですか?

榎本さん:
各蒸溜所の歴史を楽しみ、熟成した時間を感じ楽しむのが魅力だと思います。また味わいでも、ストレートで飲むとき、ストレートに加水をしたとき、ロックで飲むとき、ハイボールで飲むときなど飲み方で味わいが劇的に変わるというは、ウイスキーならではの楽しみ方だと思います。

熟成期間に想いを馳せながら、このウイスキーにはこの飲み方が合うななど独自な飲み方を見つけてたくさん楽しんで欲しいです。

そして、その中の選択肢の1つに私たちが造るグレーンウイスキーも一緒に楽しんで欲しいなと思います。

松本さん:
国内の食産業・農業は海外依存の側面が年々強くなっています。今回のコロナウイルスなどによって起きたサプライチェーンの断裂は、海外依存の問題を浮き彫りにしました。世界的な食糧不足のリスクも指摘されるなか、日本の米は減反しています。

だからこそ、ウイスキー事業を通じて原料から国産を取り入れることにより、ジャパニーズウイスキーの文化や農業の振興に少しでも寄与できればと思っています。

ウイスキーが1つの文化としてさらに発展できるように、原料から国産のウイスキーを進めていく中で、ジャパニーズウイスキーの世界観を創っていくことができたら幸せですね。

代表取締役社長兼蒸留所所長の松本さん

まとめ

以上、吉田電材蒸留所の代表取締役松本さんとセールスマーケティング部チーフの榎本さんへのインタビュー第2弾でした。
第1弾は、ウイスキー事業のきっかけや思い描いているMISSION、そしてグレーンウイスキーの魅力などをお伺いしました。
今回の第2弾では、グレーンウイスキー製造の秘密やジャパニーズウイスキーに対する熱い想いなどについてを余すことなく語っていただきました!

グレーンウイスキーだからこその製造方法や工夫、そしてウイスキー業界や国内農業へ吉田電材蒸留所としての想いなど貴重なお話が数多くありました。

これからの吉田電材蒸留所に目が離せません!
吉田電材蒸留所のグレーンウイスキーの発売が待ち遠しいですね!

併せてお読みください!

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