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【独占インタビュー】8ドアーズ蒸溜所共同創立者ケリー・キャンベルさん & デレク・キャンベルさん にインタビュー

2024.05.15 / 最終更新日:2024.05.15

スコットランド本島、最北端の小さな町ジョン・オ・グローツで2022年に創業した8ドアーズ蒸溜所は、一見蒸溜所にはむいてないように思われるほど厳しい自然環境に囲まれた場所に孤立しています。

しかし、その町で生まれ育ったケリーさんとデレクさんは、こうした不利な条件をうまく利用し、特別なウイスキーを生み出しました。

このウイスキーは、過酷な気象条件と潮風によってウイスキーに個性ある特徴を生み出し、素晴らしい味わいだけでなく、ジョン・オ・グローツの人々の心や歴史をも体現しています。
この独占インタビューでは、8ドアーズ蒸溜所の創設者でありオーナーでもあるケリー・キャンベルさんとデレク・キャンベルさんに蒸溜所の設立にまつわるエピソードや、ウイスキーだけでなく、彼らの出身地であるジョン・オ・グローツに対する熱い思いを語っていただきました。

併せてお読みください!

8ドアーズ蒸溜所概要

蒸溜所 8ドアーズ蒸溜所
所有者 ケリー・キャンベル、デレク・キャンベル
住所 8 Doors Distillery, John O’Groats, Wick, KW1 4YR, Scotland
設立年 2022年
公式サイト 公式HPはこちら
問い合わせ Email: hello@8doorsdistillery.com
SNS Instagram: @8doorsdistillery
X: @8DoorsWhisky

8ドアーズ蒸溜所について

蒸溜所設立について

デレクさん:
8ドアーズ蒸溜所という名前は、私たちが生まれ育った町ジョン・オ・グローツで語り継がれる神話から名付けました。私たちは長年蒸溜所の設立を夢見ており、昨年それがやっと現実のものとなりました。

Dear WHISKY:
蒸溜所設立のアイデアはどこから着想を得ましたか?

デレクさん:
私たちは数年前までロンドンに住んでおり、当時は仕事に追われる日々でした。

ケリーが仕事とプライベートの両立に疲れを感じていたことに気付いた私は変化を求め、二人ともウイスキー好きだったこともあり、蒸溜所設立を思いつきました。

私たちは10年前のバーベキューでウイスキーを飲んだことをきっかけに、ウイスキーにはまりました。以来、ウイスキーは人々、思い出、物語を生み出す特別な飲み物だと考えています。

蒸溜所の共同設立者であるキャンベル夫妻

ジョン・オ・グローツについて

Dear WHISKY:
なぜジョン・オ・グローツに蒸溜所を設立したのですか?

デレクさん:
私たちの故郷であるジョン・オ・グローツは歴史ある地域であり、ブランディングやマーケティングの観点からも、私たちのようなクラフト蒸溜所にはうってつけの場所でした。

二人で蒸溜所について話していく内に、ウイスキーを通じてこの非日常的な風景と歴史を伝えることができれば、素晴らしいものができると確信しました。

さらに、かねてからジョン・オ・グローツに雇用機会が少ないことを懸念していたため、ウイスキーと故郷を愛する私たちは、それらを組み合わせてこの地域に雇用を創出したいと考え、ジョン・オ・グローツに蒸溜所を建設しました。

Dear WHISKY:
デレクさんのアイデアを聞いた時、ケリーさんはどのように思われましたか?

ケリーさん:
最初はあまりに大きな計画で、何から始めたらいいのか見当もつきませんでした。しかし、たくさん話し合いながら、それぞれのステップをより達成しやすいように細分化してみました。

そうすると、このとても壮大な計画が徐々に現実的で、ワクワクするものに見えてきました。

最終的には、ジョン・オ・グローツの魅力を信じこの地域や風景、特にここの海が好きだと改めて感じることができました。

デレクさん:
観光も大きなポイントでした。この地域に人を呼び込み、この町の魅力を伝えることも非常に重要でした。

スコットランド最北部に位置するジョン・オ・グローツ

故郷を支えるために

Dear WHISKY:
この町では雇用がそれほどにも大きな問題なのですか?

ケリーさん:
とても大きな問題です。

地方の小さな町によくある問題のひとつです。雇用のチャンスに恵まれず、仕方なくジョン・オ・グローツから離れた人も多くいます。

Dear WHISKY:
雇用に関して何か変化はありましたか?

デレクさん:
蒸溜所のチームのうち3人は、私たちと仕事をするためにこの町に戻ってきました。例えば、ライアンは町を出て結婚しましたが、教師である奥さんを連れて戻ってくることにしました。今では彼だけでなく、新しい先生もこの町にいます。このように雇用の機会を創出することで、人々は町に戻ってくるのです。

ジョン・オ・グローツ再興への思いを話すデレクさん

ジョン・オ・グローツにおける8ドアーズ蒸溜所の役割と意義

文化とその影響力

Dear WHISKY:
ジョン・オ・グローツにおけるウイスキー文化について教えて下さい。

デレクさん:
他のスコットランドの町と同様、ありとあらゆるウイスキーが、とてもよく飲まれています。この市場にあわせて、Seven Sonsシリーズをリリースしました。

なぜなら、どんなウイスキーにもそれぞれ合ったシーンやチャンスがあると思うからです。

いつ、どこで、誰と飲むかによって、ブレンド、シングルモルト、ウイスキーリカーなど、さまざまなシーンに合わせたウイスキーをご用意しています。

Dear WHISKY:
蒸溜所設立に対する地元の人々の反応はどうでしたか?

ケリーさん:
反応は前向きで、地元の人たちからは多くの支援を受けました。

ジョン・オ・グローツ地域の人口は約2万人で、この村の人口は200〜300人ほどなのですが、この蒸溜所の建設に携わった労働者の90%がこの村の出身者だったことをとても誇りに思っています。

徒歩5分圏内の隣人たちは、この場所を一緒に作ったパートナーです。

蒸溜所のロゴが描かれた窓

新世代のウイスキーブランドとしてのモダンな発想

ケリーさんとデレクさんの責務

Dear WHISKY:
ケリーさんとデレクさんは蒸溜所でどんな仕事をしていますか?

ケリーさん:
私たちふたりはほとんどの工程を監督し、流れを確認しています。私の主な仕事はブランディング、マーケティング、財務管理をしています。

デレクさん:
私は樽の注文など、生産サイドを主に担当しています。スペインのカスクノリアというクーパレッジとともに、樽のカスタマイズなどを中心に管理しています。

Dear WHISKY:
新しい蒸溜所として、決断やアイデアを出さなければならない機会が多くあると思います。どのようにしてその決断をしていますか?

ケリーさん:
基本的には蒸溜所のあらゆる事についてふたりで話し合っていますが、スコットランドのブランディング・エージェンシーの力も借りています。

特にデザインやブランディング戦略については、専門家を入れることを重要視しています。例えば、ロゴなどは私たち2人でベース案を考え、代理店と話し合いながらブラッシュアップしていきました。

ふたりで協力しながら作り上げた蒸溜所

ブランディング戦略について

Dear WHISKY:
ブランディング戦略について教えてください。

ケリーさん:
何百年もの歴史を持つ他の蒸溜所に比べれば、私たちは非常に若い蒸溜所です。無理して伝統をマネしたり、古く見せようとしたりするのではなく、自分たちらしさを貫こうとしました。

蒸溜工程、ポットスチルなどは伝統的なものを使用してますが、建物やブランドは現代的です。

このように私たちは若さを生かしつつも、必要なときには古き良き伝統を活かすことにこだわりました。

伝統と現代性を兼ね備えた蒸溜所を目指しているキャンベル夫妻

従業員と共通目標

Dear WHISKY:
従業員は何人いらっしゃいますか?

ケリーさん:
正社員が7人で、パートタイムの方も何人か働いています。

Dear WHISKY:
皆さん関係性について教えてください。

ケリーさん:
私たちは少人数のチームで、ほとんどがご近所さんなこともあり、とても仲がいいです。皆で目標を掲げ、それに向かってチーム一丸となって取り組んでいます。同時にライアンのように、皆の固定観念や想像から外れ、さまざまな麦や造りについて創造的で革新的なアイデアを絶やさない人もいます。

8ドアーズ蒸溜所のロゴが描かれたパーカー

ウイスキーの製造について

Dear WHISKY:
ウイスキーの製造全般は誰が担当しているのですか?

デレクさん:
私たちも関わってはいますが、主にライアンが製造の責任者です。彼は大麦と酵母にすごくこだわりを持ってるんですよ。

また、ジョン・ラムゼイからも手厚くサポートを受けています。ジョンはこの業界で40年以上働いており、その経験と知識を生かしながら、ライアンとともにニューメイクを造りあげてくれました。

ウイスキー造りには科学と芸術という2つの側面があります。科学的な側面は私たち2人のような新しいディスティラーでも学び、実行に移せますが、芸術的な側面は経験からしか学べない分野だと思います。そのため、私たちのような新しい蒸溜所にはジョンやライアンのように経験値や芸術性をサポートできる人々が必要なのです。

Dear WHISKY:
ライアンさんはどのようにして8ドアーズ蒸溜所にやってきたのですか?

ケリーさん:
ライアンもこの辺りの出身で、私たちがこの蒸溜所を設立しようとしていたときにコンタクトしてきてくれました。

彼は、私たちに足りなかったウイスキー業界での経験や知識を提供してくれるので、とても助かっています。

また私たちは彼の父親を個人的に知っていたので、つながりはさらに深まりました。

日常生活とビジネスの両立

2人のワークライフバランス

Dear WHISKY:
普段の1日のスケジュールを教えてください。

ケリーさん:
忙しいですね。ウイスキーの製造は朝8時から16時半まで稼働しており、その後も18時頃までは仕事をしています。ただ、毎日8時から18時まで働いているというわけではなく、日によって違います。スタートアップ企業ですし、決まった終業時間はありません。蒸溜所を出る時間は決まっているかもしれませんが、常に家でもビジネスについて考え、話し合っているので終わりがありません。

ですが、常に好きなことをしている時間なので全く苦ではありません、むしろとても楽しいです。大きな計画を小さなステップに分け、優先順位を決め、次の目標をクリアにすることを大切にしています。

デレクさん:
ときには辛い日々もありますが、目の前の数あるチャンスを逃さないために、軌道をそれずやるべきことを確実にこなすことが肝心です。2人ですべてをうまくこなすことは簡単ではありませんが、それがまた楽しい部分でもあります。

蒸溜所の未来のため、一生懸命に働くケリーさん

互いを支え合う心

Dear WHISKY:
蒸溜所での仕事を通して心が折れそうになったことはありますか?

デレクさん:
ありません。

素晴らしいチームや支えてくれる友人と家族とともに旅をしているので、とても楽しいです。みなさんの助けあってこそです。

Dear WHISKY:
ここ数年でお二人に変化はありましたか?

ケリーさん:
私個人は建物の建設や設計についてとても詳しくなりました。スケジュールを管理し、建設中に現場に立ち会うことで、このプロジェクト以前には触れてこなかった分野を学ぶことができました。

デレクさん:
一つ学んだ大事なことは、どんなことでも必ず答えと解決方法はあるということです。このような巨大なプロジェクトを前に私たちは、二人で一歩一歩地道な努力を重ね、ここまできました。

今では、私たち二人にできないことはないと思っています。

互いに異なるスキルを持っているので支えあいながら進んできました。コロナのような不測の事態にも適応し、落ち着いて一つずつ対応していくことの重要性を学びました。

8ドアーズ蒸溜所チームで支え合いながらウイスキー造りに邁進している

8ドアーズ蒸溜所が作るウイスキーについて

Seven Sonsについて

Dear WHISKY:
Seven Sonsシリーズについて教えていただけますか?

ケリーさん:
スコッチの法律上、8ドアーズのシングルモルトができるまで最低でも3年かかるため、その間Seven Sonsを製造することにしました。

ボトラーとして、他の蒸溜所からウイスキー樽を購入し、ジョンの協力のもとこのブレンデッドウイスキーを造りました。

このウイスキーの特徴は、ファーストフィルのシェリー樽熟成のモルトウイスキーを40%も使用していることです。開発に際してジョンと何度も試験や吟味し、最終的にモルトウイスキーの比率を40%にすることが決まりました。

デレクさん:
Seven Sonsはハイボールやカクテルにもすごくむいていると思います。個人的にはジンジャービールと割るのが好みです。

私はシェリーカスクのフルーティーさや甘さが大好きで、Seven Sonsではそれを前面に押し出しています。

私のシェリーカスクへの嗜好は、間違いなく蒸溜所としての樽選定にも影響していると思います。

Seven Sons、ブレンデッドウイスキー

Dear WHISKY:
このウイスキーはどのように飲むのがおすすめですか?

ケリーさん:
お好みの飲み方で飲んでください!ストレートでも、ハイボールでも、カクテルでも、楽しんでいただけたらそれでいいのです。ウイスキーは敷居が高く、決まった飲み方をしなければならないと誤解してる方もいらっしゃるかもしれませんが、そのようなことはありません。

シングルモルトウイスキーについて

Dear WHISKY:
シングルモルトのリリース時期はいつ頃を予定していますか?

デレクさん:
定かではありませんが、4〜6年後くらいでしょうか。こればっかりは予想ができませんね。

8ドアーズ蒸溜所の造るニューメイク

ウイスキーリキュールについて

Dear WHISKY:
ウイスキーリキュールについて教えていただけますか?

ケリーさん:
デザートウイスキーとでもいいましょうか、甘く風味が豊かで、ウイスキー初心者にもお楽しみいただけると思います。糖度が非常に高く、とても飲みやすいです。これもジンジャービールとの相性がいいですし、意外なところだと、ホットチョコレートにも良く合います。中にはアイスクリームにかけて楽しむ方もいらっしゃいます。

8ドアーズ蒸溜所が造るウイスキーリキュール、Five Ways

まとめ

遠い北のはずれにある小さな町、ジョン・オ・グローツから生まれた8ドアーズ蒸溜所は、シングルモルトの研究と技術を洗練しつつ、Seven Sons ブレンデッドウイスキーとFive Ways ウイスキーリキュールを販売しながら、今後数年間でシングルモルトウイスキーのリリースを目指しています。8ドアーズ蒸溜所の努力やこだわりからは、ウイスキーに対する愛情だけでなく、地元の町とその人々への深い情熱を感じます。

彼らはジョン・オ・グローツの魅力やカルチャーをウイスキーに込めより多くの人へ届けることで、故郷の素晴らしさを広めるため日々奮闘しています。

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