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【海外マーケット】ミドルトン蒸溜所、2026年のカーボンニュートラル実現に向け約80億円の投資

2022.09.01 / 最終更新日:2024.02.28

Irish Distillers社はミドルトン蒸溜所に対し約80億円(5000万ユーロ)を4年間に渡って投資をすることを発表しました。2026年までに蒸溜所のカーボンニュートラル化を達成するため設備を新調する予定です。

今回、過去最大規模の投資によってミドルトン蒸溜所はアイルランドで初のカーボンニュートラルな蒸溜所となる見込みです。Irish Distillers社を擁するペルノ・リカール・グループが2050年までにネットゼロ実現を指針とし、その流れを汲んでの試みです。

ミドルトン蒸溜所とは

ミドルトン蒸溜所について

ミドルトン蒸溜所は1975年に設立されたアイルランドで最大の蒸溜所です。アイルランド独特の蒸留スタイル、シングルポットウイスキーが有名であり、ジェームソン、パワーズ、レッドブレスト等、様々なアイリッシュウイスキーブランドを製造しています。

住所 Old Midleton Distillery,
Distillery Walk, Townparks, Midleton, Co. Cork, P25 Y394
公式サイト https://thesinglemaltshop.com/

ミドルトン蒸溜所の歴史

1825年にマーフィー兄弟が蒸溜所を設立したことにより、ミドルトン蒸溜所の長い歴史が始まります。1840年に起こった大飢饉によるウイスキー需要の減少や、スコットランドでブレンデッドウイスキーの成功、アイルランドと英国間で貿易戦争及び米国での禁止などにより、アイリッシュウイスキー界に悪影響を与えます。

新しい蒸溜所を設立

1860年代までにミドルトン蒸溜所を含む地元の蒸溜所が合併をして、コーク蒸溜所会社が設立されます。数年後、ダブリンに拠点を置いていた、ジョン・ジェムソン氏が創業したボウ・ストリート蒸溜所と、ジョン・パワーズ氏のジョンズ・レーン蒸溜所を閉鎖しコーク業務に集中させ、ミドルトン蒸溜所に隣接した位置に新しく現在のミドルトン蒸溜所を設立しました。これにより、新たな一歩を踏み出したのです。

カーボンニュートラルへのロードマップ

Irish Distillers社は目標達成にいたるまで、いくつかの段階から構成されるロードマップに沿って計画を実施する予定です。

初期段階の計画と期待される効果

ロードマップの初期段階では、燃料消費量の少ない高効率ボイラーへの投資など、いくつかの取り組みを通じ、エネルギー使用の総量削減に重点を置く見込みです。また、Irish Distillers社は専門家と連携し、蒸留工程で発生する廃熱を再利用する革新的技術、Mechanical Vapor Recompression(MVR)を導入する予定です。これらの取り組みにより、最大70%の二酸化炭素排出量の削減が期待されています。

後期段階の計画と期待される効果

後の段階では、アイルランド初のグリーン水素企業であるEIH2社と提携し、化石燃料をバイオガスやグリーン水素などの再生可能エネルギーに置き換える予定があります。この画期的な技術の導入は、スコープ1およびスコープ2の炭素排出のゼロ化に貢献するものです。米国環境保護庁によると、スコープ1の排出量とは、組織が所有または管理する排出源から発生する直接的な温室効果ガスのことを指します。スコープ2とは、天然ガスなどのエネルギー購入や使用に伴う間接的な温室効果ガスの排出のことです。アイリッシュウイスキー協会(以下: IWA)は、蒸留とボトリングを、業界におけるスコープ1およびスコープ2の最大の排出源の一つと位置づけています。

今回の発表について、Irish Distillers社の代表取締役と兼会長、コナー・マクウェイド氏は、「この計画は何年もかけて作られたものであり、目標達成にはさらに多くの年月がかかることは理解しています。しかし、この大胆で勇敢な未来への一歩を踏み出すことによって、化石燃料を永久に置き去りにすることができると確信しています。」と述べました。

推奨されている計画

今回の計画はアイルランド副首相のレオ・バラドカー氏からも賞賛を受けており、「Irish Distillers社のように、大胆な変革に取り組んでいる企業は、多くの同業他社の道をも切り開くでしょう。」とし、アイリッシュウイスキー業界全体として持続可能な実践と努力を奨励しています。

アイリッシュウイスキー業界での持続可能な実践

IWAは2022年5月に業界の環境への影響を軽減するための「2022年 サステナビリティ・ロードマップ」を発表し、持続可能な開発目標やアイルランド政府の気候変動に関する法律を支援する業界全体の重点分野を詳述しています。アイルランド政府は2050年までに気候変動対策として、アイルランド全土で炭素ゼロの経済実現を目標としています。

IWAのビジョンは、エネルギー供給の脱炭素化、水使用量の削減、持続可能な穀物収穫の支援など、いくつか目標を掲げています。また、業界内での変革に加え、サプライチェーン、地元コミュニティとの連携、リサイクル包装への切り替えや持続可能な観光の推進など、様々な取り組みを行っていく予定です。

サステナビリティ・ロードマップについて、IWAの理事長、ウィリアム・ラヴェール氏は次のように述べています。「ロードマップは、アイルランドを世界で最も持続可能な蒸溜所がある場所にするという共通の野望のもと、業界全体が協力し、知識を共有し合うためのものです。私たちは、アイルランドの農業や地元サプライヤーへの支援を最大限に行いながら、製造方法とサプライチェーンが環境に与える影響を最小限に抑えることを約束します」

※2021年時点でアイリッシュウイスキー産業はEU第2位の蒸留酒輸出量、約5800億円の市場規模と試算されています。

出典
Irish Distillers社
https://www.irishdistillers.ie/irish-distillers-announces-plans-for-midleton-distillery-to-become-carbon-neutral-by-2026-using-break-through-emissions-reducing-technology/

米国環境保護庁
https://www.epa.gov/climateleadership/scope-1-and-scope-2-inventory-guidance

アイリッシュウイスキー協会
https://www.ibec.ie/drinksireland/news-insights-and-events/news/2022/05/30/irish-whiskey-association-publishes-roadmap

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