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【独占インタビュー】日本最北の蒸溜所・Kamui Whisky代表取締役社長のケイシー・ウォールさんにインタビュー!

2024.03.22 / 最終更新日:2024.03.23

日本最北端に浮かぶ利尻島に、2020年にできた日本最北の蒸溜所Kamui Whisky(カムイウイスキー)。
ロシアが目と鼻の先にある小さな離島で、独自の手法を用いて北海道の恵みを存分に生かしたウイスキー造りを行っています。

今回はKamui Whisky 株式会社の代表取締役社長を務めるケイシー・ウォール(Casey Wahl)さんにKamui Whiskyでのウイスキー造りについてインタビューしました!

アメリカ出身の起業家であるケイシーさんは、旅行で利尻島を訪れた際にスコットランドのアイラ島を思わせる自然に感動し、蒸溜所をこの地に設立することを決めました。
利尻島は冷涼な気候、良質な湧き水とピートが採れることからウイスキー造りに適していると考えたケイシーさんは、2016年ごろからKamui Whisky設立の構想を練っていたとのこと!

利尻島初の蒸溜所であったKamui Whiskyのその設立までの道のりは一筋縄ではいかないことも多く、数多くの挑戦を乗り越えて設立に至ったそうです。
そんなKamui Whiskyでのこだわり抜いたウイスキー造りと、そこにかける想いについてお話を伺うことができましたので、是非最後までご覧ください!

併せてお読みください!

Kamui Whiskyについて

Kamui Whiskyとは

Kamui Whiskyは2020年、北海道の稚内沖に浮かぶ小さな離島である利尻島に設立し、2022年に蒸留を開始した新しい蒸溜所です。
島の西側、利尻町の神居に建つKamui Whiskyは荒々しい日本海がすぐ目の前に広がっています。蒸溜所に吹き付ける潮風をふんだんに吸い込んだウイスキーは、利尻の島の恵みを存分に生かして造られています。
現在はニューメイクである神居原酒を発売しており、2026年からウイスキーの販売を開始するそうです!

Kamui Whisky製ニューメイク『神居原酒』

Kamui Whisky概要

蒸溜所名 利尻蒸溜所
所在地 北海道利尻郡利尻町沓形神居128-2
設立 2020年
会社名 Kamui Whisky 株式会社
代表取締役 ケイシー ウォール
蒸溜所公式HP Kamui Whisky公式ホームページ

ケイシー・ウォールさんのご紹介

ケイシー ウォール さん(Kamui Whisky代表)
アメリカ・ニューヨーク州出身、大学卒業後日本に移住。
Kamui Whiskyの代表を務めるほかに人材紹介会社の経営や書籍の執筆、映画の脚本を手掛けるなど、その活躍は多岐にわたる。

ケイシーさんご自身について

学生時代のご経験とお酒との出会いについて

Dear WHISKY:
日本に移住するまではどのようにして過ごされていたのですか?

ケイシーさん:
子供の頃はサウジアラビアで過ごしました。ただ英語を使っている高校がサウジアラビアにはなかったため、高校進学のタイミングでアメリカに戻り、高校・大学と7年ほどアメリカで過ごしたのちに来日しました。

Dear WHISKY:
ウイスキー業界に携わる前からお酒はお好きだったのでしょうか?

ケイシーさん:
若いころからお酒を飲むのが好きでした。若いころはお酒に強かったので、アメリカに戻った後大学生の頃はパーティなどで、たくさん飲んだりしていました。

Dear WHISKY:
ウイスキーに興味を持つようになったきっかけはありましたか?

ケイシーさん:
10代の頃、友達を訪ねるためにスコットランドのアイラ島によく行っていました。アイラ島はウイスキーの聖地としても知られているところで、小さな島
であるにも関わらず、有名なウイスキー蒸溜所がいくつもあります。実際に友人の家の近くにもラフロイグ蒸溜所があり、そういった蒸溜所に度々訪れていました。このように、アイラ島ではウイスキーがとても身近にあったので、自然と興味を持つようになりました

日本でウイスキー事業を始めるまでのお仕事について

Dear WHISKY:
日本に来られたのはいつ頃のことですか?

ケイシーさん:
21歳の時に日本に移住して、最初の2年間は大分県の中津市で英語教師として働いていました。その時からずっと日本で暮らしているので、実は人生の半分近くを日本で過ごしました。
中津は僕の第二の故郷と呼べるくらい好きな町で、田舎での生活も楽しかったです。

Dear WHISKY:
その後はどのような仕事をされていたのですか?

ケイシーさん:
英語教師として二年間働いた後は、人材紹介会社で人材スカウトの仕事をしていました。IT業界を中心に、主に外資系IT企業が日本で人材を集める際の手伝いをしていました。

Dear WHISKY:
人材紹介会社での仕事の魅力はどういったところにあるのでしょうか?

ケイシーさん:
20代前半という若い年齢で色々な企業の経営者と話すことができて、様々な企業の課題やビジョンを聞くことができました。普通に企業で働いているとひとつの企業のことしか知ることができませんが、この仕事をしていると数多くの企業とかかわって話が聞けます。そこに魅力を感じて、人材業界に興味を持つようになり、のちに独立して人材紹介会社を経営するようになりました。

Kamui Whisky設立について

日本最北端の島、利尻島でウイスキーを造ろうと思ったきっかけ

Dear WHISKY:
利尻島との出会いについて教えてください。

ケイシーさん:
2015年に初めて利尻島を訪れました。その時は観光で行っただけだったのですがアイラ島を彷彿とさせる美しい自然に魅了され利尻に一目惚れしてしまいました。アイラ島には個人的に良い思い出がたくさんあるので、それらを思い出させてくれる利尻島はすごく魅力的に映りました。

Dear WHISKY:
なぜ利尻島に蒸溜所を造ろうと思ったのですか?

ケイシーさん:
この地に何か自分とのつながりを持ちたいと思い、ウイスキー蒸溜所を設立することを決めました。そのため、 Kamui Whisky は綿密な計画があってスタートしたわけではなく、衝動的な使命感熱い想いがあって始まったプロジェクトでした。

「Kamui Whisky」という名前の由来

Dear WHISKY:
「Kamui Whisky」という名前にはどのような由来があるのですか?

ケイシーさん:
この蒸溜所の住所が「利尻町沓形神居」という地名なのでそこからとっています。また、「カムイ」がアイヌ語で「神」という意味を表し、実際に「神居」と書くように「神が宿るところ」を意味しています。北海道のアイヌ文化に敬意を込めて、神居という名をこの蒸溜所に取り入れてKamui Whiskyと名付けました

Dear WHISKY:
素敵な理由ですね!その神居という土地にはどのような魅力があるのでしょうか?

ケイシーさん:
まず目と鼻の先に海が広がっており、蒸溜所に吹き付ける潮風を活かしたウイスキー造りができます。これに加え、カムイ泉水という利尻山の火山岩によって濾過された上質な湧き水が採れるので、ウイスキー造りに非常に適した場所です。

Dear WHISKY:
神居でケイシーさんが気に入っているポイントはありますか?

ケイシーさん:
神居は利尻島の西に位置しているので、海に沈む美しい夕日が見られます。私はウイスキーというのはロマンが大切だと思っていて、日本海に沈んでいく夕焼けを見ながらをウイスキーを飲めたらいいなという想いがありました。

Kamui Whiskyから見た日本海に沈む美しい夕焼け

Kamui Whiskyの設立にあたって

Dear WHISKY:
利尻島に蒸溜所を設立するにあたり苦労したことはありましたか?

ケイシーさん:
本当に様々な困難がありました。まず、蒸溜所を建設するための土地の入手が非常に困難だったことです。利尻島は小さい島ながらに開けていて、利用されていない土地が多くあるように見えるのですが、実は売りに出されている土地というのはほとんどありません。今はだれも使っていない土地であっても、100年以上前に生きていた人の名前で登記されていたりするので、土地を譲り受けることも一筋縄ではいかないという現状がありました。

Dear WHISKY:
土地を手に入れるにも一苦労なんですね。神居以外にも候補地はあったのでしょうか?

ケイシーさん:
廃校になった中学校を再利用することも考えたのですが、検討を重ね、最終的には利尻町の神居に蒸溜所を建てることができました。

Dear WHISKY:
そのほかにはどのような困難があったのですか?

ケイシーさん:
他にも多くありましたが大きい困難だったのは、地元の方の理解を得るのが難しかったことです。利尻は漁業と観光業が主な産業の小さな島なので、蒸溜所を建設するという初めての試みに対して働く人が簡単には集まりませんでした。そのため、島民の皆様から信用を得ることや賛同を得ることが非常に難しかったです。

Dear WHISKY:
島民の理解を得られるようなきっかけのようなものはあったのですか?

ケイシーさん:
蒸溜所の建物が出来上がるなどの設立に向けたプロジェクトが進むにつれ、徐々に計画に賛同する人が増えてきました。特に昨年の夏に神居フェスティバルを開催したこととNHKに取り上げられたことをきっかけに、多くの人に理解してもらえるようになりました。

神居の地に建てられたKamui Whisky

Kamui Whiskyのウイスキー造りについて

「利尻をボトルに詰める」

Dear WHISKY:
Kamui Whiskyではどのようなコンセプトのもと、ウイスキー造りを行っているのでしょうか

ケイシーさん:
「利尻をボトルに詰めたい」という想いがあり、Kamui Whiskyではテロワール※を重視したウイスキー造りを行っています。元々、私の利尻島への情熱から始まったプロジェクトですので、利尻の個性を感じられるようなものを造りたいという想いがあります。一口飲んだ時に利尻島の美しい情景が自然と浮かんでくる、そんなウイスキーが私たちが目指す理想のウイスキーです。

テロワール
土壌や気候などといった原料の育てられる環境を指す言葉。
原料となるモルトや仕込水、熟成環境などがウイスキーの風味に与える影響を指すこともある。

Dear WHISKY:
素敵なコンセプトですね!利尻島のテロワールを生かすために具体的にどのようなウイスキー造りを行っているのですか?

ケイシーさん:
神居ウイスキーの原料の一部にチョコレートモルトを試験的に取り入れています。チョコレートモルトとは160℃前後で焙煎させた麦芽のことで、これを原料の一部に使うことで利尻のテロワールを引き出しやすくなります。また、原料ではおもにライトリーピーテッドモルトを使用しています。ピートの強いタイプのモルトを使用すると、土地や環境由来の風味をかき消してしまうため、スムースな口当たりを生むライトリーピーテッドモルトを使用しています。

利尻島でのウイスキー造り

Dear WHISKY:
利尻島の気候はウイスキー造りにどのような影響を与えるのでしょうか?

ケイシーさん:
利尻島は夏には30℃を超えることもあり、年間の気温差がかなり大きいのが特徴です。年間の気温差が大きいほど熟成が早く進み、エンジェルズシェアが大きくなるので、今寝かせている樽の熟成がどのように進むのか楽しみにしています。

Dear WHISKY:
これからのウイスキー造りに新たに取り入れる予定の取り組みなどはありますか?

ケイシーさん:
利尻島では、過去に複数回起きた利尻山の噴火によって生成された構造の異なる様々な火山岩が存在します。それぞれの火山岩に数時間水を濾過(ろか)させることによって、水の味わいの幅を広げることができます。今後、島の湧き水や蒸溜所建設中に発見したカムイ泉水をこれらの火山岩で濾過させ、異なる仕込み水を使ったウイスキーのラインアップを出していきたいと考えています。

Dear WHISKY:
水も使い分けるんですね!ほかに利尻産のものを用いたウイスキー造りなどは行うのでしょうか?

ケイシーさん:
現在、ウイスキー製造で一部使っている北海道の中標津産モルトの製麦工程に利尻で採れるピートを使いたいと思っています。他にも利尻島で作った大麦や酵母、北海道内で作ったミズナラ樽を製造プロセスに導入することで、利尻の恵みを生かし、より利尻のテロワールを感じることのできるウイスキーを造っていきたいです。

Kamui Whiskyのこれからの展望

Dear WHISKY:
これからのKamui Whiskyのウイスキー造りで大切にしたい想いは何ですか?

ケイシーさん:
『Whisky is made with love』です。Kamui Whiskyから発売する『神居ウイスキー』は、一つ一つ丁寧に作るためにこれからも大量生産はせず、少量生産をしていきます。複数の仕込水を使い分けて、ラインアップも今後は増やしていきたいと思っていますが、ベースの味は郷愁的かつ情緒的な味わいにしたい。その上でしっかりと利尻の土地の魅力を感じられるウイスキーを造っていきたいという想いがあります。

Dear WHISKY:
ウイスキーの製造工程以外で新たに取り入れたい取り組みなどはありますか?

ケイシーさん:
ウイスキーはそのストーリー性が大切だと私は思います。利尻のテロワールの魅力を反映させた神居ウイスキーを楽しんでもらうためにも、今後は蒸溜所見学やツアーの企画、試飲スペースの開設などに取り組むことで、多くの人に蒸溜所へ足を運んでもらう機会を増やしたいと考えています。神居ウイスキーが生まれる利尻という土地を体験し、神居ウイスキーが造られるまでの物語を知っていただきたいと思います。

ジャパニーズウイスキー100周年に対する思い

ジャパニーズウイスキー100周年

Dear WHISKY:
2023年はジャパニーズウイスキー100周年の節目でもありますが、ジャパニーズウイスキーに対するケイシーさんの想いを教えてください。

ケイシーさん:
ジャパニーズウイスキーは今そのクオリティや認知度の高さで国際的に評価されていると感じています。ウイスキー業界も盛り上がっており、今、日本で次々と新しい蒸溜所も誕生していますが、この業界にかかわる当事者としてはそんな状況に少し不安や懸念も感じています。このウイスキーブームがいつまで続くかもわかりませんし、よくも悪くも先が見えない中ですべての蒸溜所が生き残るとも限りません。
ただ日本のウイスキー業界の魅力の一つはその情熱にあると思います。様々なウイスキーの造り手が協力し合って、共にこの業界を盛り上げていきたいという風に思います。

Dear WHISKY:
ケイシーさんが思うジャパニーズウイスキーの魅力は何でしょうか?

ケイシーさん:
日本ウイスキーの父・竹鶴正孝が100年前に日本にもたらしたこの産業は、情熱と希望に満ちていると感じています。今や日本は世界有数のウイスキー生産国になりましたが、チャレンジ精神にあふれていてまだまだ成長していくポテンシャルがあると思います。この業界に関わる1人の人間として、ジャパニーズウイスキーがこれから先の100年も大きく前進していくことを期待しています。

ジャパニーズウイスキーのこれからを語るケイシーさん

最後にDWの読者に向けてメッセージをお願いします!

Dear WHISKY:
最後に、Dear WHISKYの読者に向けてメッセージをお願いします!

ケイシーさん:
Kamui Whiskyのウイスキー造りは唯一無二だと思います。私たちの取り組みは誰にも真似することのできないものだと思っていますが、その裏には様々な苦難や挑戦があったからだと考えています。私は、ウイスキーはその物語性が大切だと思っており、ウイスキーに秘められた物語を知ることでよりそのウイスキーを楽しむことができるようになると思います。なのでこのDear WHISKYの取り組みはウイスキーの物語を伝えることでウイスキーの魅力を多くの人に伝えることに貢献していると思います。読者の皆様にはぜひこれからもDear WHISKYを通じて、様々なウイスキーの魅力に触れていただけたらなと思います。

さいごに

今回は日本最北の蒸溜所・Kamui Whisky代表のケイシーさんに取材させていただきました!
様々な苦難を乗り越え、ロマンに満ちたウイスキー造りを行っているケイシーさんのお話はどれも興味深いものばかりでした。2026年以降の神居ウイスキーの発売やラインアップの増加などこれからのKamui Whiskyの活躍に目が離せませんね!
ぜひ蒸溜所現地レポートも併せてご覧ください!

併せてお読みください!

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