【Exclusive Interview】Ernest Troth – James Bay Distillers
- 造り手
- 蒸溜所(海外)
年間を通して比較的穏やかで乾燥した気候が特徴である兵庫県明石市。
瀬戸内海に面した場所に位置し、100年以上前からウイスキーに携わってきた江井ヶ嶋蒸留所。
今回はそんな長い歴史を持つ江井ヶ嶋蒸留所へ独占インタビューを行ったのでその様子をご紹介します!お話を伺ったのは、所長の中村さんとブレンダーの大川さんです!
第1弾では江井ヶ嶋蒸留所のウイスキー製造に焦点を当てていきます!江井ヶ嶋蒸留所について知ることはもちろん、日本初の試みなどについても知ることができるので、ぜひ第1弾を最後まで読んでいただきたいです。
江井ヶ嶋蒸留所は1919年にウイスキー製造免許取得し、1961年に蒸留開始しました。
長い歴史を持つ江井ヶ嶋蒸留所は、瀬戸内海付近に位置しているので、瀬戸内海の気候や特徴を活かしたウイスキー製造などを行っています。
詳しくはこれからご紹介していきます。
会社名 | 江井ヶ嶋酒造株式会社 |
取締役社長 | 平石 幹郎様 |
本社所在地 | 兵庫県明石市大久保町西島919番地 |
電話番号 | 078-946-1001 |
蔵見学 | 要事前予約(ご予約はこちらから) |
Dear WHISKY:
江井ヶ嶋蒸留所のアピールポイントを教えていただいてもいいですか?
大川さん:
大きく分けて2つあります。まずは歴史の長さです。1919年にウイスキーの製造免許を取得して1961年に造り始めました。
製造開始から60年以上、免許取得から100年以上ウイスキーに携わってきました。
次に立地です。国内外の蒸溜所は山にあるところが多いのですが、江井ヶ嶋蒸留所はすぐ目の前が瀬戸内海という場所に位置しています。
瀬戸内海の気候などは熟成している原酒にも少なからず影響していると思います。
Dear WHISKY:
瀬戸内海の気候が原酒に影響しているとのことですがどのような部分に影響が与えていると思われますか?
大川さん:
夏は盆地に比べて暑くなく、冬は10年に1度雪が降るくらい暖かい気候です。また年中乾燥しているという部分も瀬戸内海特有の気候です。
この雨が少ない気候というのがウイスキーの熟成に影響を与えていると思っています。
また、エンジェルズシェアが多いのも特徴の1つです。スコットランドだと平均して年2~3%のところ江井ヶ嶋蒸留所の場合年5%です。
その気候的な観点が熟成の速さにもつながったり、潮の香りやソルティーさが出ると思います。
Dear WHISKY:
気候以外にも江井ヶ嶋蒸留所さんならではの特徴などございますか?
大川さん:
樽に関してですかね。
1つはシェリー樽を1番大きな割合で使っている部分だと思います。
江井ヶ嶋蒸留所は1961年から製造を始めているのですが、当初からあまりバーボンを使っていません。400~450Lサイズの樽を新しく造ってもらったりシェリー樽で製造をしていてその流れは今でも続いています。現在でも4割がシェリー樽となっています。
中村さん:
シェリー樽を使って、製造を行う蒸溜所は日本でも少ないと思っています。
その中でも、この蒸留所は私が知っている限り、日本で1番シェリー樽を取り扱っていると思います。
シェリー樽を管理するのとバーボン樽を管理するのでは、シェリー樽のほうが圧倒的に面積を使うので他の蒸溜所の方々はあまり取り扱っていないようです。しかし江井ヶ嶋蒸留所は敷地がとても広いのでシェリー樽を置けるスペースがあります。
ノンエイジの半分はシェリー樽を使用しているので非常に珍しいものになっています。
Dear WHISKY:
シェリー樽を多く扱えるのは、江井ヶ嶋蒸留所さんの敷地面積の広さからくる特徴なんですね。
大川さん:
もう1つはシェリー樽を使ってきた歴史の長さだと思います。古くから使っていたシェリー樽をいまだ使用しています。
スペインのカバレロ社というところから昔に購入しており樽番号から推測すると1970年代ということがわかっています。
Dear WHISKY:
50年以上前のシェリー樽を使って製造を行うことでどのようなウイスキーになりますか?
大川さん:
やはりとても特徴的な風味ができます。
シングルモルト江井ヶ嶋オールドシェリーバッット12年(完売)として発売しているのでバーで見かけたら飲んでみてください。
Dear WHISKY:
” 水もと仕込み ” という珍しい仕込み方法について教えていただけますか?
中村さん:
” 水もと仕込み ” という珍しい仕込み方法の日本酒があるのでそのお酒を樽に入れて、そのお酒は樽貯蔵として売り空いた樽にニューポットを入れるということをしています。
この ” 水もと仕込み ” を日本の蒸留所で初めて試みて、現在、江井ヶ嶋蒸留所が唯一この仕込み方法を採用しています。
まだ熟成が3年たってないから発売されてないんですけどね。
Dear WHISKY:
” 水もと仕込み ” をするとこうなるというような特徴はありますか?
大川さん:
” 水もと仕込み ” というのは室町時代の造り方で、その特徴の1つに、今の日本酒よりも酸度が高くなります。
普通の日本酒と違う酸味の出方が原酒に影響を与えてくれるのではと期待しています。
Dear WHISKY:
発売されるのがとても楽しみです!
どのような経緯で ” 水もと仕込み ” をやってみようと思いついたのですか?
中村さん:
基本的にお酒造りで困難に直面したら、消費者だったらどのようなお酒を飲みたいと思うのかというのをよく考えて造るようにしています。
おそらく製造者だったらそのように考えて造っているのではないでしょうか。その想いから樽の提案などを行っています。
Dear WHISKY:
大川さんや中村さんが提案した樽を教えていただきたいです。
大川さん:
私たちが入社する前のものだと日本酒カスクやテキーラカスクとかがありました。
私たちが提案したものでいうとカルバドスカスクとビアカスクを造りました。あとは熟成中のものがいろいろあります。
Dear WHISKY:
熟成中のものもどのように完成されるのかとても楽しみです!
兵庫県森林組合連合と伐採した材木を利用する取り組みについても教えていただいてもよろしいですか?
中村さん:
少し先の話なのですが、森林組合と連携して廃棄処分になる予定の木材を使い、樽を造る予定です。
道路拡張や伐採の際に余った木材などは、チップに加工するか廃棄処分されるそうです。
しかし私たちは材料がもったいないと感じてしまい、加工して樽を造ろうと考えています。
木材名は秘密なんですけど、おそらく聞いたことのない樽材だと思います。
現在は加工している状況なので、2024年くらいには樽になるのかなって思っています。
この取り組みも先ほどのお客様の目線に立って考えた結果、面白そうだと思える樽が提案できています。
大川さん:
2022年に栗樽も出したのですが、あれも今まで世界的に使われたことのない珍しい樽でした。
その延長で今回のお話があったというような感じになります。
Dear WHISKY:
ではその森林組合とタッグを組んだものを飲めるのは、4~5年後というような感じなのですね、すごく楽しみです!
中村さん:
でもウイスキーって本当にそういうのが楽しみですよね。
意外と時間ってあっという間に過ぎて行って、実際に5年たった時今日話題になったものが実際に飲めるというのが楽しい気がします。
Dear WHISKY:
いろいろな取り組みをしていることがとても良くわかりましたが、実際にバッティングやブレンデッドする際に味わいだったりということに関して気を付けている部分などございますか?
中村さん:
昔からある商品に関しては自分が担当する前のブレンダーの方が造ったレシピがあるので、そのまま味を維持し続けることに気を配っています。
2022年からは大川がブレンダーになりましたので気を付けていることなどあると思います。
大川さん:
そうですね、今までのものは継承していけるように気を付けています。
私がブレンダーになってからは、シングルモルト江井ヶ嶋SEXTETや蒸留所限定のボトル、フェス限定のボトルなど造りましたがそれぞれの特徴を出そうとブレンディングするようにしています。
例えば赤ワインカスクを中心にブレンドするとしたら甘酸っぱさを出すようにしたり、逆に若い原酒でフルーティーやバナナっぽさを強調したりそのような感じで造っています。
Dear WHISKY:
ではジャパニーズフェス限定のボトルも大川さんが造られたんですか?
中村さん:
そうですね、ジャパニーズフェスのようなイベント系は全部大川のほうが手掛けています。
Dear WHISKY:
大川さんが造られるときどのような想いで造られるとかございますか?
大川さん:
イベントなど特にそうなのですが来られたお客様が記念に買ったとき、飲まれる方も多いと思いますがとっておいて思い出として残す方も多いと考えています。なのでその想いを裏切らないような中身にしようと心掛けています。
後は味が被らないようにしようとしている点だと思います。
ウイスキーマニアの方とかいろいろなイベントに行かれているじゃないですか。なので買って飲んで頂いたときに「味が前と全く同じだ」というようにならないように注意しています。
Dear WHISKY:
他の蒸溜所さんだと鉄骨の蔵に貯蔵という形が多い中、江井ヶ嶋蒸留所さんは木造蔵でウイスキーを貯蔵しているとのことですが、木造蔵で貯蔵することで影響されたものなどはありますか?
中村さん:
昔の木造の建物はとても通気性がいいです。
そのため海の潮っけが波風に乗って原酒に取り込みやすくなるので、ソルティーさという影響が出ているのではないかと思います。
ご存じのように木造蔵に現在はウイスキーを貯蔵していますが、昔はたくさんの日本酒を貯蔵していました。
Dear WHISKY:
他にも2019年にはポットスチルを新調なさったとのことですが、何か新調したことにより影響が出た部分はございますか?
大川さん:
新調した理由としては、長年使い続けていたことでポットスチルが古くなってきてしまったことと、1919年のウイスキー免許取得から100周年を記念してという2つありました。
ポットスチルの形を変えてしまうとウイスキーの質も変わってしまうので、同じ形のままにしましたが唯一窓のサイズだけ大きくしました。
ウイスキーを製造する際の工程で2回蒸留するうちの、1回目(初溜)でなるべく泡立てることがポイントなので、しっかり泡立ちを目視できるように窓を縦長に設置してもらいました。
江井ヶ嶋蒸留所第1弾は江井ヶ嶋蒸留所のウイスキー製造などについて取り上げてきました。
長くウイスキーの製造を行っていたからこその、ウイスキー100周年への想いがあったのが感じられます。
第2弾では、蒸留所の方から見た現在のウイスキー業界や今後の江井ヶ嶋蒸留所に焦点をあてていきたいと思います!
長い歴史を持つ江井ヶ嶋蒸留所から現代のウイスキー業界に対する想いなどをご紹介していくのでお楽しみに!!