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【独占インタビュー】 ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準の基準のポイントは?:デイブ・ブルーム<第2弾>

2024.02.05 / 最終更新日:2024.02.05

今回、Dear WHISKYは、ウイスキー業界で著名な著者、講演者、教育者であるデイブ・ブルーム氏にインタビューをしました。このインタビュー第2弾では、新しく施行されるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準についてデイブ氏にお伺いしました。インタビュー第1弾はこちらからご覧いただけます。

JSLMAの設定した基準について

ジャパニーズウイスキーは、 100年にわたる歴史があるにもかかわらず、つい最近まで「ジャパニーズウイスキー」を具体的に定義するための基準や規定が存在しませんでした。その結果、ボトラーズが、日本でボトル詰めされただけの海外製のウイスキーを「ジャパニーズウイスキー」として販売したり、熟成させた焼酎を海外市場で「ジャパニーズウイスキー」として表記し販売をすることが許されていました。このような悪質な行為は、世界中の市場で消費者の信頼を裏切ってきました

このような事態に対応するため、日本洋酒酒造組合(JSLMA)は2021年4月、ジャパニーズウイスキーのラベルに関する新しい基準を発表しました。この基準では、ジャパニーズウイスキーは以下の要件を満たす必要があると定義されています:

  • 原材料は、麦芽、穀類、日本国内で採水された水に限ること。なお、麦芽は必ず使用しなければならない。
  • 糖化、発酵、蒸留は、日本国内の蒸留所で行うこと。なお、蒸留の際の留出時のアルコールぶんは95度未満とする。
  • 内容量 700 リットル以下の木製樽に詰め、当該詰めた日の翌日から起算して 3 年以上日本国内において貯蔵すること。
  • 日本国内において容器詰めし、充填時のアルコール分は 40 度以上であること。
  • 色調の微調整のためのカラメルの使用を認める。

JSMLAに所属する製造者は、2024年までにこの基準に従うことが義務付けられています。しかし、本当にこれだけでジャパニーズウイスキーの信頼が回復できるのでしょうか?ウイスキー業界に精通するデイブ・ブルーム氏が、現在の状況とこれらの基準に対する見通しについて、ご自身の見解をお話しくださいました。

ジャパニーズウイスキーの現状

ジャパニーズウイスキーの現状

Dear WHISKY:
ジャパニーズウイスキーはどのように定義されるべきだとお考えですか? 

デイブさん:
「ジャパニーズウイスキー」の名を冠したいのであれば、その製造は完全に日本国内で行われなければなりません。穀物などの原料は輸入しても構いませんが、熟成などの工程は日本国内でされなければなりません。これは、規定にそぐわない原酒の輸入や製造方法を、変えなければならないということではありません。ただ、それらの製品がジャパニーズウイスキーとしてラベル付けできなくなるだけなのです。代わりに、世界ブレンドなど他の名前で呼ばれるべきであり、その区分がはっきりすることはジャパニーズウイスキーの国内・国際市場に好影響を与えるでしょう。

Dear WHISKY:
世界に比べて日本の現状はいかがでしょうか? 

デイブさん:
日本は主要なウイスキー生産国で唯一、生産基準のない国です。英国のウイスキー業界においては 15〜20年前に基準が導入されました。北欧の国々も基準の確立を進め、さらには比較的若いニュージーランドのウイスキー産業でさえ基準の枠組みを整えています。山崎の製造が1924年に始まり、今年で100年目を迎える日本のウイスキー業界の基準がまだこの段階にあるというのは、とても歯がゆいものです。

Dear WHISKY:
なぜこの基準の施行に時間がかかっているのでしょうか? 

デイブさん:
これは日本のウイスキー産業が設立された際の、独特な税金システムと国内志向だったことに由来しています。当時は地方でのブレンデッドウイスキーの生産・販売が中心となっており、海外市場に日本のウイスキーが出回ることはほとんどありませんでした。基本的に国際市場への参入がなかった当時の日本では、海外のウイスキー業界の影響を受けにくい状態にありました。輸出が活発化し始めた後も、仲介業者や蒸溜所はジャパニーズウイスキーがなんたるかを疑問視せず、基準が存在しないことの問題性を理解するまで時間がかかってしまいました。ジャパニーズウイスキーの輸出が重要視されるようになり初めて、国内でも基準についての議論が始まりました。知見のあるいくつかの企業が、すべてのウイスキーが公平に精査されることの必要性を認識し始めたからです。

基準と消費者

基準と消費者

Dear WHISKY:
この新しい基準の重要性とはなんでしょうか? 

デイブさん:
信頼性と消費者の保護のために基準(規定)が重要であることは、誰もが理解しています。これらの基準は産業だけでなく、消費者のためのものでもあるのです。ボトルを手にした消費者は、ラベルに記載された情報が実際のボトルの中身だと疑いませんが、それは消費者と製造業者の間の信頼関係があるからこそのものです。そこでもし「ジャパニーズウイスキー」と主張するブランドいくつかが、実際にはジャパニーズウイスキーではないものを製造していた場合、この信頼はすぐに失われます。その結果、消費者はすべてのジャパニーズウイスキーに対して、疑念を抱くようになってしまいます。それが大きな問題でした。基準が不十分であったために、ジャパニーズウイスキーのイメージは、輸出産業において大きな打撃を受けました。

Dear WHISKY:
消費者はこの変化に気がつくでしょうか? 

デイブさん:
消費者全員が細かく目を通しているとは限りませんが、だからと言って基準が不要だというわけではありません。私は決して美味しい「ワールドブレンド」のウイスキーを批判しているわけではありません。私が言いたいのは、それらは正しく表記されるべきであるということです。

次のステップ

Dear WHISKY:
この基準を遵守・管理する責任は誰にあるのでしょうか? 

デイブさん:
この業界では、一人一人全員が責任を持っていると考えます。著者、講演者、ホームページやブログの運営者、どのような方法であれウイスキーについて発信する立場にいるなら、基準に従っていない企業について声を上げる責任があります。正しいことをするためには、言いづらいことを言う覚悟を持たなければなりません。ウイスキー製造業者はこれらの基準に従い、協力し合う必要があるため、多くの企業はこの基準に対するアプローチをどのようにするか模索しているだろうと思われます。

Dear WHISKY:
この基準は十分なものでしょうか? 

デイブさん:
この基準は基本的に任意であり、法律ではありません。ウイスキー製造業者自身に監視責任があり、ガイドラインを一時的に遵守したり離脱したりすることもできてしまいます。その上新しい製造業者は、JSLMAに参加しない限り、これに従う必要すらありません。これが基準が任意のものではなく、法的に強制されるべき理由です

Dear WHISKY:
ジャパニーズウイスキー業界とその基準についての見解をお聞かせください。

デイブさん:
私が批判的に見えるかもしれませんが、今この変革が起こっていること自体は嬉しく思っています。これまで、私が知っている多くのBARのオーナーや愛好家が、基準が導入されるまではジャパニーズウイスキーは信頼できないと言っていたことから、 長い時間がかかったことにもどかしさを感じてきました。過去数年間、基準の不足と在庫不足が、ジャパニーズウイスキーの発展に悪影響を与えていましたが、これを機に変革が起きるでしょう。新たに施行されたこの基準は、ジャパニーズウイスキー業界が次の段階に進むためのカギであり、賞賛に値する発展です。

新しい基準に関するデイブ・ブルーム氏の記事はこちらから。

このインタビューの第1弾はこちらから。

デイブ・ブルーム氏:
ウェブサイト URL: https://thewhiskymanual.uk/
World Whisky Forum HP: https://worldwhiskyforum.org/
Instagram: @davewasabi

参照

Japan Spirits & Liqueurs Makers Association (JSLMA)

http://www.yoshu.or.jp/index.html

JSLMA Standards for Labeling Japanese Whisky (English)

http://www.yoshu.or.jp/statistics_legal/legal/pdf/independence_07.pdf

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