シングルトンはスコットランドのスペイサイド・北ハイランドで造られているシングルモルトウイスキーです。
実はこのシングルトンはディアジオの傘下の3つの蒸留所で造られており、ブランド名も同じなのです。
その3か所の蒸留所というのが以下になります。
もちろん、蒸留所別に歴史や製造工程も異なりますので、ウイスキーの味わいがまったくことなるのも当然です。
飲み比べるのも面白いかと思います。
また、ダフタウン蒸留所で造られているシングルトンの9割はブレンデッドウイスキーに使用されており、シングルモルトとしての販売はわずか1割程度で大変貴重でかなり珍しいウイスキーとなっております。
本記事ではシングルトンの種類と製法と歴史について解説し、おすすめの飲み方もご紹介します。
この記事のポイント
シングルトンの蒸留所は種類別に3か所ありますので、順番にご紹介いたしましょう。
ダフタウンはスペイサイドエリアのダフタウン地区にある蒸留所です。
ダフタウンはその名の通り、ジェームズ・ダフ氏が築いた街でウイスキーのメッカとも言えます。
他にもモートラック、グレンフィディック、バルウェニーなどの蒸留所があることでも有名です。
人口1500人ほどの小さな村ですが、現在7か所もの蒸留所がひしめき合って建っています。
ここで、造られているシングルトンは日本では『シングルトン・ダフタウン』と呼ばれていますが、元々はヨーロッパ向けに生産されていたボトルのようです。
ダフタウンの創業は1896年、当時リバプールに住んでいた投資家たちによって食品工場だった建物を改装して建てられました。
1933年にアーサー・ベル・サンズ社に買収されてからは原酒の98%は『ベル』のブレンデッド用キーモルトとして使用されており、残り2%がシングルモルトとしてのリリースとなっています。
豊かな土壌と新鮮な水源を持っており、仕込み水は、コンバルヒル丘にあるジョックの井戸水を使用しています。
蒸留工程にはステンレス製の発酵槽が12基、初留器4基、再留器4基のポットスチルを設備しています
時間をかけた蒸溜工程を経て作られた原酒は、ヨーロピアンオークのシェリー樽、バーボン樽に詰められ熟成されます。
グレンオード蒸溜所は1838年創業とダフタウンよりも長い歴史を持つ蒸留所です。
そのため創業当時からある19世紀に建築された建造物が今も多く残されています。
創業者は地元の領主トーマス・マッケンジーという人物です。
ブラックアイル半島の付け根、インバネスの北西にあるクロマティ湾の入り江に位置しており、教区の密輸業者の小屋の敷地内に設立されました。
グレンオードの名前は『渓谷の丘』という意味であり、湖に囲まれ渓流が流れるハイランド北部に建つ蒸留所ということからこの名前になりました。
この地では蒸留が唯一の製造業であり、かつては9か所の認可蒸留所があったそうですが、現在ではグレンオードが唯一の認可蒸留所となっています。
最近の需要の増加に伴い、グレンオードは2度の拡張を行いました。
2015年に改装が行われ、実はスコットランドでトップ5に入る生産量を誇っています。
第一期工事では500万LPA、第二期工事(2014年完成)では1000万LPAと、生産能力が倍増しました。
蒸留工程はストレート型のスチルで初留器3基、再留器3基、生産量はディアジオ系列で最大級をほこっています。
ストレート型のポットスチルやドラムと呼ばれる巨大な装置による精麦を初めて採用した蒸留所でもあるのが特徴。
蒸留所内には精麦工場も併設しています。
新しいものをどんどん取り入れて成長著しい蒸留所です。
蒸留所には自社の製麦所も併設されており、グレンオードだけでなく、タリスカーをはじめとするディアジオ社の蒸留所に麦芽を供給しています。
大麦の生産地では古くから密造が盛んであったくらいで、ビクトリア王朝の時代から「危険な飲み物」と言われるくらいにコクのあるモルトウイスキーを生産してきました。
使用する大麦は主にノンピートの種類を使用しています。
一方でアイラ島のヘビーピーテッドモルトも生産しています。
仕込み水は、ナムユン湖とナムバック湖の水源を利用しています。
グレンダラン蒸留所はスペイサイドのダフタウンにある名門蒸留所ですが、知名度はあまり高くないかもしれません。
グレンダランという名前の由来は『ダラン川の谷』を意味します。
蒸留所の位置はフィディック川の方が距離が近いのですが、なぜかこの名前がついています。
国王エドワード7世(在位1901~1910年)にスペシャルボトリングを献上していたという、由緒ある蒸溜所として知られています。
また、かつてはグレンダランの原酒は『オールドパー』のキーモルトとして重要な役割を担ってもいました。
こちらもほとんどはブレンデッド用に作られたウイスキーが占めていますが、シングルトンではシングルモルトを楽しむことができます。
シングルトンのおすすめラインナップをご紹介します。
画像引用:thesingleton.com
スペイサイドのウイスキーらしいなフルーティさ、香ばしいナッツなどでライトでリッチな味わいが特徴。
キャラメルやハチミツなど甘いフレーバーが心地よい1本です。
冷凍庫に冷やすことでより冷たく、さっぱりしたハイボールも楽しめます。
二酸化炭素が飛びにくくなるので最後まで泡の強さが残ったハイボールに!
画像引用:Amazon.co.jp
樽で熟成している期間も長いので樽のバニラの香りやシナモンやスパイスの香り、ほんのりとトフィーの香りがより複雑に感じられます。
フルボディに近いミディアムで充分なコクも味わえます。
こちらの銘柄は熟成年数の記載がないノンエイジのボトルです。
ディアジオは2018年の5月頃にダフタウンのボトルをリニューアルしました。
その時に新しく加わったのがこちらです。
柔らかく、穏やかな甘みはあるのに原酒の若さを感じられる側面もあるアロマ。
ヨーグルト、薄いハチミツ、柑橘類、マーマレード、わずかにプラム等のドライフルーツ。
既存の12年ものより少しだけ甘くなっていると公式でもPRされています。
こちらもノンエイジのボトルですが、バーボン樽熟成原酒とシェリー樽熟成原酒がバランス良くブレンドされており、ノンエイジとは思えない深みのある芳醇なコクが特徴的です。
アロマはビターチョコレートやドライフルーツの甘さと苦み、麦芽ビスケット。
味わいはコーヒー、蜂蜜、カラメルの甘さなど。
こちらもノンエイジのボトルです。
2014年リリースで、バーボン樽で熟成した原酒のみをボトリングしています。
香りはバーボン樽由来のバニラ、蜂蜜。
味わいはソフトキャラメル、トースト、ドライフルーツで比較的ライトながらも香りが際立っています。
日本でもよく流通しているのが12年と18年です。
12年はヨーロピアンオーク樽のシェリー樽とアメリカンオークのバーボン樽を使用した熟成が活発でありながら、柔らかく、フルーティさと樽熟成の甘みの融合が見事です。
オレンジピールやバニラ、チョコレートやビスケットのフレーバーが効いています。
ザ シングルトン グレンオード12年は2009年 ISC ゴールド受賞、2010年 Grand Scotch Whisky Master ゴールド受賞しています。
こちらは近年までは日本での販売もありましたが、現在は終売しています。
ネットなどで探してみましょう。
熟成にはヨーロピアンオークのシェリー樽とバーボン樽を使用した酒齢18年以上の原酒のヴァッティングによってリッチなコクやまろやかさが感じられます。
アロマはリンゴやプラム等のフルーティさやドライフルーツやチョコレートの濃厚で芳醇な味わい余韻も長く楽しめます。
2009年 IWSC ゴールドを受賞、2008年 ISC ゴールドを受賞しています。
アロマは漂うのはバニラ、それに焼きたてのクッキーのような香ばしい甘みから柑橘系の爽やかな風味やバニラの香りがでてきます。
味わいはオレンジピール、香ばしい麦芽クッキー、レーズンやドライプラム、ビターチョコレートの渋みや苦味・甘さ・苦味・酸味・渋みが複雑に絡み合う美味しさですが、飲みやすいテイストにしあがっており、ビギナー向けといえます。
スペイサイドのグレンダラン蒸溜所で製造されているボトルで、アメリカ向けに販売されています。
リバティは、グレンデュラン蒸留所の100年以上にわたるウィスキー造りの専門知識を祝ってリリースされたレゼルヴ・コレクションの一つ。
同蒸留所のモルト・マスターの手によって滑らかでリッチ、芳醇な味わいに仕上がっています。
トリニティも、グレンデュラン蒸留所の100年以上にわたるウィスキー造りの専門知識を祝ってリリースされたレゼルヴ・コレクションの一つ。
注目に値する豊かさと深みとキャラクターの調和をもたらすために3つの段階を経てつくられました。
リバティよりもスパイシーでオーキーな味わいに仕上がっています。
シングルトンとはオスロスク蒸留所が造っていたシングルモルトウイスキーですが、「オスロスク(Auchroisk)」は「赤い流れを渡る浅瀬」という意味のゲール語でスコットランド人以外には発音しにくいと言う事でシングルトンというブランド名でリリースになったということです。
こちらはフルボディかつ芳醇なコクのある味わいで日本でも絶大な人気を博しましたが残念ながら、2001年に終売となっています。
ネットなどでは見つかるかもしれません。
シングルトンオブオスロスクはシェリーとバーボンの古樽で熟成したモルトをヴァッティングし、それを再び熟成させて仕上げるダブルマリッジ製法で造られています。
アロマは甘い香り立ちでチョコレートやカラメルソース、イチジクやドライレーズン。
味わいは濃厚なジャム、マーマレードのような甘みの中にピリピリとしたドライ感も感じられます。
クッキーや蜂蜜の余韻もあります。
シングルトンはストレートで飲むのがおすすめです。
ロックだと若干ぼやけた印象になるので避けましょう。
ハイボールでは、ダフタウン12年のハイボールの上に少し温めたダフタウン18年を注いで飲むとアレンジされた味わいが非常に美味です
ウイスキーが世界的に入手困難となっているこの時代にお手頃価格の個性が異なる美味しいレアシングルモルトは飲めるうちに飲んでおくのが賢明と言えるのではないでしょうか。
評価も高く現在生産量も増えているにも関わらず、あまり見かけないのはディアジオの戦略の一貫のようです。
ザ シングルトン ダフタウンがヨーロッパ向け、ザ シングルトン グレンオードはアジア向け、ザ シングルトン グレンダランがアメリカ向けと市場を変えています。
アジア向けなら入手しやすいように思うのですが、欧州向けのボトルが多く輸入されている日本ではザ シングルトン ダフタウンが一番見かけますね。
是非、見かけたら飲み比べをしてみてはいかがでしょうか。
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