今回は、「イチローズモルト」を手掛ける秩父蒸溜所へ単独インタビュー記事の第2弾となります! 第1弾はこちらから!
第2弾となるこちらの記事では、秩父蒸溜所・秩父蒸溜所の造るウイスキーについてについてお聞きしています!(今回のインタビューは、第1弾・第2弾・第3弾に分けてお届けします!)
肥土伊知郎氏が創業したベンチャーウイスキーの秩父蒸溜所。2008年2月に稼働を始めた同蒸溜所は、スコッチウイスキーの伝統的製法に秩父の風土を取り入れた個性あふれるウイスキー造りを行っています。 秩父蒸溜所の手掛ける「イチローズモルト」は、海外の品評会でも多数の最高賞を受賞をするなど、現在のジャパニーズウイスキーの隆盛をけん引する存在です。 秩父蒸溜所についてはこちらから
株式会社ベンチャーウイスキーのグローバルブランドアンバサダーである、吉川由美さんにお話をお伺いしました。 吉川さんは、2019年に「世界のウイスキー業界に著しい貢献を果たした人物」としてワールドウイスキー・ブランド・アンバサダー・オブ・ザ・イヤーに輝いた実績もあります。
秩父蒸溜所では、ミズナラの発酵層やスコットランド・フォーサイス社製のポットスチル、独自の樽工房など、他の蒸溜所に無い特徴がいくつかあると思いますが、実際のウイスキー造りにどう反映されるんでしょうか??
吉川さん:ベンチャーウイスキーでは色々な革新的で新しいチャレンジをしているというイメージを持たれている方が多いです。しかし、どちらかというと他と違うことをしようと考えているわけではなく、ウイスキーの愛好家として、生産者としてどのようなことができたら面白いかな、良いウイスキーができるかな、ということを考え続けた結果が今の形となっています。 会社の方向性として、「原点回帰」というお話をよくさせていただくのですが、昔やっていたことだけど、今は生産性などを考慮してやめてきたことが業界でも沢山あります。 ベンチャーウイスキーは、50~60年代のウイスキーに憧れて入ってきた人が多い会社でもあるので、その当時にやっていた造りって何なのかを考えたときに、フロアモルティングであったり、蒸溜所独自の樽工房などにたどり着きました。ですので、どちらかというと昔やっていた造りを追及している形です。 新しいことにチャレンジしようというよりは、元々あったことを続けてきた結果、他との違いが生まれたというのが今の状態かなと思います。
社員の方は元々ウイスキー好きの方が多いんですね!
吉川さん:創業当初から積極的なリクルーティングは行ってきませんでした。ウイスキーが本当に好きで、美味しいウイスキーを造りたいという思いの人たちが集まってきて今のチームができています。 造ったウイスキーが届く先は、ウイスキーの愛好家なので、ウイスキーの愛好家の目線でウイスキーを造るということは重要だと考えています。
ベンチャーウイスキーの方々がウイスキーへの情熱を持っているからこそ美味しいウイスキーが出来上がっているんですね! 秩父蒸溜所のこれまでの取り組みで印象に残っている取り組みは何ですか??
吉川さん:製樽やフロアモルティングに関しては、実践している会社があまり無いなかでしたが、ウイスキーの愛好家だからこそチェレンジしてみたいという気持ちを皆が持っていて、規模は小さくても少しづつ毎日続けていって今、段々と形になってきています。様々な失敗や成功を小さく繰り返しながら今の形に持ってこれているという点では、やってきて良かったなと思いますし、すごく勉強になった部分も多くあります。 第2蒸溜所を建てた際も、新しい大きなチャレンジの一つだったと思います。第1蒸溜所だけで充分じゃないかと思う方もいらっしゃったかもしれませんが、そこであえてもう一つ蒸溜所を立ち上げて、 やってみたかった直火蒸溜にチャレンジするというのも大きな挑戦であって、まだ商品でリリースはされていませんが、形を作っている段階です。
秩父蒸溜所では様々な樽で熟成を行っていると思いますが、変わった樽や面白い樽で熟成した事例などはありますか?
吉川さん:数年前ですとビール樽は面白い試みであったかなと思います。また、最近秩父限定品で出したアガベスピリッツカスクなんかは中々エッジの効いた商品であったかなと思います。 日本のレギュレーションではどんな木材でも使用できるのですが、基本的に秩父蒸溜所ではスコットランドのレギュレーションに合わせて、ナラ材を使うという方針を決めています。 ハイブリッドカスク(ヘッドとステーブで違う木材を使用)を用いてみたり、様々な樽サイズで熟成させてみたりもしています。せっかくクーパレッジ(樽工房)があるので、今後もこだわりを大切にしながら、様々な試みを続けていきたいと思います。
秩父蒸溜所の貯蔵庫
秩父蒸溜所では、シングルモルトをメインにウイスキーを造られていると思いますが、今後、シングルモルト以外のラインナップについての予定などはありますか?
吉川さん:現在の秩父蒸溜所の設備で造ることができるのがモルトウイスキーなので、シングルモルトを生産しています。ただ、やはりウイスキーの造り手としても、ウイスキーの愛好家としてもブレンデッドウイスキー・ブレンデッドモルトの製造にとても魅力に感じています。社長の肥土をマスターブレンダーとしてブレンダー室も稼働させました。 自分たちの持ち樽の中から最終的にどのようなウイスキーを造るのかという部分で、自分たちの造りたい味わいを表現することができますし、会社の方向性を表すことができます。 より広いフレーバーの幅の中からどういった製品を造っていくのかという点は消費者の方に知ってほしい部分です。 そういった点では、ブレンデッドウイスキーというのは面白みがありますし、より今後力を入れていきたいカテゴリーです。 特に、現在はワールドブレンドというカテゴリーでブレンデッドウイスキーを生産し続けています。自分達で造れるモルトウイスキーにプラスアルファで様々な国のウイスキーを加えて、どうのような味わいのウイスキーを造るのかは、ぜひ消費者の方に知っていただきたいですね。
モルトウイスキーの製造と比べて、ブレンデッドウイスキーを造る際の難しさはどのような部分になりますか?
吉川さん:シングルモルトウイスキーは、自社のウイスキーを組み合わせて造るので味の想像が付きやすいです。一方でブレンデッドウイスキーは他社が造った全く違う個性のウイスキーを組み合わせる必要があるので、ブレンダーの技術がより重要になってきます。使える原酒の幅が広がるので表現の幅は広がりますが、その会社の実力が問われる商品でもあると考えています。 ウイスキーメーカーとして業界の中で実力を今後も上げていくためにも、幅広いフレーバーの原酒を貯蔵庫にストックしていって、色々な方向性のブレンデッドウイスキーの味わいを表現していきたいなと考えています。
現在、実際にブレンデッドウイスキーの製造にあたって取り組んでいる事例などはありますか?
吉川さん:試験的に数年前から始めて、なかなか面白い結果になっているなというのが、ブレンデッドウイスキーのシングルカスクというカテゴリーです。通常ですとブレンデッドウイスキーは、原酒をブレンドしてボトリングするという流れですが、ブレンドした後に、もう1度樽に戻して熟成させるという試みをしています。 ブレンドのレシピだけでなく、ブレンドした後の熟成でも味わいが変化するので、世界で唯一無二のウイスキーを造ることができます。会社のオリジナリティや想像力が表現できるカテゴリーなので、面白い製品になってきているなと感じています。
ブレンドした原酒をさらにもう1度熟成させるんですね! 秩父蒸溜所のブレンデッドウイスキーのシングルカスク、楽しみにしています!
第3弾へ続く!
以上、秩父蒸溜所へのインタビュー記事第2弾でした! 第3弾の内容は、吉川さんの好きなウイスキー・ウイスキー初心者に向けてです! 是非お楽しみに!
ウイスキーカスクの購入、Barでの取り扱い、取材・インタビュー、事業提携のご相談などお気軽にご連絡ください