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【独占インタビュー】「Made In Japan」日本ウイスキー界に新しい風を吹かせる吉田電材蒸留所とは<第2弾>

2023.04.07 / 最終更新日:2024.02.11
【独占インタビュー】「Made In Japan」、日本ウイスキー界に新しい風を吹かせる吉田電材蒸留所とは<第2弾>

日本の高度経済成長を「モノづくり」で支えた技術力と情熱をウイスキー造りに注ぐ、吉田電材蒸留所。

今回は全く異なる異業種からの参入をし、日本初のクラフトグレーンウイスキー専業の蒸留所として「正直で緻密な技術のウイスキー」を造る吉田電材蒸留所へ独占インタビューを行ったのでその様子をご紹介します!
今回は、前回のウイスキー事業の起源やMISSIONをお伺いした第1弾に続く第2弾!

第2弾ではグレーンウイスキーの製造やジャパニーズウイスキーに対する熱い想いに焦点を当てていきます!
日本で唯一クラフトグレーンウイスキー専業の蒸留所として行う設備についてや、100%国産の原酒を目指す吉田電材蒸留所だからこそ思うジャパニーズウイスキーに対する思いをお伺いしています!
ぜひお楽しみください!

独占インタビュー第1弾の記事はこちらから!

 

吉田電材蒸留所の設備とは

グレーンウイスキーにとって特徴的な設備とは

Dear WHISKY:
グレーンウイスキーならではの設備などはございますか?

松本さん:
硬い穀物でも粉砕できるハンマーミルです。
モルト蒸溜所ではローラーミルというミリングマシンを使用していますが、現在製造している弊社のグレーンウイスキーのもととなる穀物のデントコーンやライ麦は大麦麦芽より硬いものが多く粉砕することができません。弊社ではハンマーミルを使用することにより、デントコーンはもちろん、それ以外の穀物を粉砕することができる設備が整っています。

Dear WHISKY:
ハンマーミルを使用する理由は穀物の硬さゆえなのですね!他に特徴的な機械はありますでしょうか?

松本さん:
他にはクッカーという機械を使用しているということが特徴ですね。
弊所のグレーンウイスキーは仕込み~蒸留まで、粘度がかなり高い「おかゆ」のような「マッシュ」の状態で加工を進めていくので、強力な攪拌機を装備しており、仕込み中は何度も温度を上げたり、下げたりする必要があります。モルト蒸留所と比べると綺麗な麦汁をとらないためろ過板が付いていないことも異なる点です。中間製品の状態が異なるからこそ設備もそれに適したものを使用していますね。

Dear WHISKY:
グレーン穀物ならではですね!ちなみに蒸溜器は何を使用していますか?

松本さん:
Kothe社のハイブリッドスチルを使用しております。
弊所としては、バーボンに限らず多種多様な原料を使用したいと考えており、よりグレーンウイスキーに適した設備で造っていきたいという気持ちが強かったので、実績が多くあるハイブリッドスチルを選択したのです。当蒸留所のハイブリッドスチルは、シカゴにある世界的に有名な「KOVAL蒸留所」とほぼ同じものでして、立ち上げ製造指導には同社のロバートバーネッカーCEOも駆けつけてくれました。

Dear WHISKY:
使用している設備も様々で特徴が多いですね!グレーンウイスキーは穀物を複数使うことが出来ると思うのですが、こちらも専用の設備などを導入しているのですか?

松本さん:
先ほどお話したハンマーミルは、メーカーと独自に開発したものを使用していています。
弊所の場合は原料の受けタンクを3つ導入しております。この3つそれぞれがロードセルといって重量計になっています。そのため好きな原料を自由に組み合わせて、かつ好きな重量配合でブレンドすることができます。

グレーンウイスキーだからこそ苦労したこと

Dear WHISKY:
グレーンウイスキーならではの難しさはございましたか?

松本さん:
まずはやはり、なによりも身近にクラフトグレーンウイスキーの知見を持つ方がいなかったことです。クラフト蒸留所でグレーンウイスキーを専業にしたのは弊所が初めてですし、ハイブリッドスチルでの立ち上げを経験している人も日本では多くありません。
しかし、試験蒸留免許取得から約1年にわたる弊所ヘッドディスティラー北村による研究開発、そして先ほど紹介したロバートバーネッカーCEOや、キリンの名誉ブレンダーでいらっしゃる早川健さんにご指導いただき、何とか乗り越える事ができました。

Dear WHISKY:
ハイブリッドスチルを使用することにはどんなメリットがあるのですか?

松本さん:
まず、強力な撹拌機を装備するなど構造的に、粘度が高く焦げ付きやすいマッシュでも蒸留することができるので、蒸留管理などがポットスチルより、優れていると思います。マッシュを蒸留するときに、特に気になるのが焦げ付きの問題だからです。焦げは原酒の味に大きく影響するので、実績のある設備は安心感がありますね。
さらに、ハイブリッドスチルでは酒質のコントロールがしやすいことも魅力です。弊所は様々な穀類を使用しますので、その穀物の特徴ある香りを引き立たせることができるように、精留塔のカラム段数を変更することで蒸留アルコール度数をコントロールしたり、細やかな温度管理によって軽やかな酒質から重たい酒質など様々な表現をすることができます。

Dear WHISKY:
グレーンウイスキーだと蒸溜のアルコール度数の管理が非常に大事になってくるのですね。

松本さん:
その通りです。特にグレーンウイスキーですと、様々な原材料を使用することになるので、原材料や配合ごと、または求める酒質ごとに製造のセッティングを変えなくてはなりません。その点、ハイブリッドスチルでは、精留塔にある7つのカラムの開放、閉鎖によって蒸留アルコール度数をコントロールし、原材料配合や求める酒質にあったセッティングで蒸留しているのです。やはりハイブリッドスチルの魅力はこのコントロールの幅があることですね。

Dear WHISKY:
難しいことが多いからこそ、グレーンウイスキーに特化した設備を導入しているのですね!

松本さん:
グレーンウイスキーは非常に難しいことも多く苦労はありますが、独自の設備を使用することで原酒の可能性を無限大にすることが出来ると思っています!

特徴的なハイブリッドスチル

吉田電材蒸留所の取り組みについて

原料だけではない国産への想い

Dear WHISKY:
国産100%を目指すというところで今後は原料だけではなく樽なども国産を目指すのですか?

松本さん:
樽に関してはまだ目途は立っていないのですが、やはり日本産で行っていきたいという気持ちはあります。ただ、樽を作るための木材はナラ材が一般的で日本だとミズナラになると思うのですが、このミズナラの樽は希少性が高く、非常に高騰しています。樽に加工できるミズナラの木材は極めて少なく、そういう意味では、日本産の木材を使用していくというのはすぐではなく中長期的な目標です!

Dear WHISKY:
将来的には日本産の木材というのも視野に入れているのですね!

松本さん:
そうですね!現在は世界的なウイスキーブームで樽が引っ張りだこの状況です。実は弊所でも一番初めにアメリカンホワイトオークの新樽を180個仕入れたのですが、そのあと新樽が買えていない状況が続いていました。そのような状況ではありますが、新樽の他にもシェリーカスクやワインカスクなど、様々な樽の仕入れをすすめていき、多種多様な原酒を造っていきたいと考えております。

Dear WHISKY:
樽を仕入れることそのものが現状厳しい状況なのですね。

松本さん:
ただそのような状況下でも、ありがたいことに別の蒸溜所の方の繋がりなどもあってなんとかつながる状況です。
弊社の榎本の繋がりで仕入れることもありますね。

榎本さんが想う吉田電材蒸留所のウイスキーの味とは

Dear WHISKY:
先ほど榎本さんの繋がりでとのお話がありましたが、どのような繋がりがあるのでしょうか?

榎本さん:
私はもともと新潟のバーでバーテンダーをしていました。様々な人にお越しいただく中で、お酒関係の人も多くいらっしゃいました。そのため、その方たちに樽を分けてくれないかという話なども進んでいます!

松本さん:
樽が調達困難だからこそ、入手できる様々な種類の樽を使用して色々試してみたいと思っています。
余談ですが、私自身もそちらのバーにたくさんお伺いしています!非常に雰囲気もお酒も良いところですよ。新潟にいらしたらぜひ行ってみてください!

Dear WHISKY:
バーにもぜひお伺いさせていただきたいです!バーテンダーを務めていた榎本さんからみて、吉田電材蒸留所のグレーンウイスキーはどのように映りますか?

榎本さん:
先日、とあるテキサスバーボンの原酒(ニューポッド)を飲む機会がありました。
この原酒は弊所とレシピがほとんど同じものでした。そこで感じたのは、味わいの甘さの部分です。設備や作り方の違いはあれど、弊社のウイスキーは北海道産のデントコーンのフレッシュな甘みを強く感じることができました。私個人としても、弊所のウイスキーはこれから多くの変化を重ねてより美味しく・深い味わいのウイスキーになると思います。

農家の方との協働の将来像とは

Dear WHISKY:
農家の方との取り組みを勧めている中で、すでにお米のウイスキーは始まっているのでしょうか?

松本さん:
本設備ではまだ行っていないのですが、ちょうど試験免許を取った方の試験用設備で行い始めました。当所はグレーンウイスキー用の設備であることの強みを生かした製品を現在開発中で、将来が非常に楽しみです。

Dear WHISKY:
新潟の農家の方だけではなく、これからは国内の農家のように広げていくのですか?

松本さん:
そうですね。新潟の農家の方々だけでも非常に嬉しいのですが、国産の原料というところで日本国内の農家の方みなさんと協働していきたいという気持ちもあります。そして日本の農家のみなさんとともに、国内だけではなく世界の方々にも「日本産のウイスキーといえば」と思っていただけるようなウイスキーを目指していきたいですね。

セールス&マーケティング部チーフの榎本さん

吉田電材蒸留所が見据える未来とこれからへの想いとは

グレーンウイスキーの可能性を広げたい

Dear WHISKY:
吉田電材蒸留所が見据えている未来とは何ですか?

松本さん:
「ジャパニーズウイスキーをもっとジャパニーズウイスキーにする」という根は変わりません。しかしそれだけではなく、グレーンウイスキー専業蒸留所として、グレーンウイスキーの可能性を広げていきたいです。
日本でのグレーンウイスキーのイメージは、あくまでブレンデッドウイスキーにおけるモルトウイスキーの相方として、安く大量生産される原酒のイメージがあるため、味わいに対する評価はあまり高くないのが現状です。しかし、近年グレーンウイスキーが、リリースされていたり、グレーンウイスキーへの可能性・期待値なども高まってきていると感じてます。
私たちも、味わい深く、愛されるウイスキーづくりを通じて、様々な味わいのあるグレーンウイスキーを提案し、日本のウイスキー文化を深耕していきたいと思っています。

Dear WHISKY:
グレーンウイスキーの概念を変えるというのは、可能性を広げるだけではなくウイスキー業界に変革が起きるかもしれませんね!

松本さん:
国内モルト蒸留所への原酒供給に関しては、単なるサイレントウイスキーというだけではなく、モルトウイスキーの相方として付加価値をつけていけるようなグレーンウイスキーを造ることが理想です。個性的なモルトウイスキーをまろやかに飲みやすくするだけではなくブレンドすることでモルトの違った一面を表現し、味わいにプラス1できるようなグレーン原酒ができたら最高ですね!

ウイスキーに対する想いとは

Dear WHISKY:
お二方にとってウイスキーとは何ですか?

榎本さん:
各蒸留所の歴史を楽しみ、熟成した時間を感じ楽しむのが魅力だと思います。また味わいでも、ストレートで飲むとき、ストレートに一滴水を落としたとき、ロックで飲むとき、ハイボールで飲むとき、飲み方で味わいが劇的に変わるというはウイスキーならではの楽しみ方だと思います。
このようなに熟成期間に思いを馳せながら、このウイスキーにはこの飲み方が合うななど独自な飲み方を見つけてたくさん楽しんで欲しいです。そして、その中の選択肢の1つに私たちの造るグレーンウイスキーも一緒に楽しんで欲しいなと思います。

松本さん:
日本の食産業・農業は海外依存の側面が年々強くなっています。今回のコロナウイルスなどによって起きたサプライチェーンの断裂は、海外依存の問題を浮き彫りにしました。世界的な食糧不足のリスクも指摘されるなか、日本のコメは減反しています。だからこそ、弊社はウイスキー事業を通じて原料から日本産に取り組むことにより、日本のウイスキーの文化や農業の振興に少しでも寄与できればと思っています。
ウイスキーが1つの文化としてさらに発展できるように、原料から日本産のウイスキーを進めていく中で、ジャパニーズウイスキーの世界観作っていくことができたら幸せですね。

Dear WHISKY:
お二方のウイスキーにかける情熱や想いを強く感じました。ありがとうございます!

代表取締役社長兼蒸留所所長の松本さん

以上、吉田電材蒸留所の代表取締役松本さんとセールスマーケティング部チーフの榎本さんへのインタビュー第2弾でした。
第1弾は、ウイスキー事業のきっかけや思い描いているMISSION、そしてグレーンウイスキーの魅力などをお伺いしました。
今回の第2弾では、グレーンウイスキー製造の秘密やジャパニーズウイスキーに対する熱い想いなどについてを余すことなく語っていただきました!
グレーンウイスキーだからこその製造方法や工夫、そしてウイスキー業界や日本農業へ吉田電材蒸留所としての想いなど貴重なお話が数多くありました。これからの吉田電材蒸留所に目が離せません!
吉田電材蒸留所のグレーンウイスキーの発売が待ち遠しいですね!

前回の第1弾はこちらから!

 

会社概要

会社概要詳細

会社名 吉田電材蒸留所(吉田電材工業株式会社)
取締役社長 松本 匡史 様
本社所在地 新潟県村上市宿田344-1
電話番号 0254-75-5081
蒸留所見学 一般の方準備中(見学についてはこちらから)

蒸溜所ページはこちらから

吉田電材蒸留所

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