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ウイスキー樽の内面を焦がす「チャー」を行う理由と熟成の効果とは

2021.09.05 / 最終更新日:2021.09.06

ウイスキー樽の内面を火で焦がすことをチャー(char)と呼び、チャーをおこなうことをチャーリング(charring)と呼びます。

樽を焦がす行為がおこなわれる理由は、熟成させるウイスキーの原酒の風味や香りをより高めることが期待されるからです。

ウイスキーを含む酒樽はその製造工程で樽を熱することがあり、ワイン樽はトーストをおこないますが、樽の内側が焦げるほどは熱しません。

この記事ではウイスキー樽を焦がすチャーについて説明し、トーストとの明確な違いやチャーの焼き加減による違いについても解説します。

この記事のポイント

  • チャーについて樽内部で発生する成分の変化まで詳しく説明
  • チャーの焼き加減によってウイスキーに与える影響を解説

チャー(チャーリング)は樽の製造に必要な工程

樽の内側を直火で焼き付け、樽を焦がすチャーは主にバーボン樽の製造に欠かせない工程になります。

なぜなら、バーボン樽特有のバニラの風味はチャーという工程を加えることで、より香りと風味が増すからです

ウイスキー樽を焦がすと炭化層とその奥に低温でゆっくりと活性化された層であるトースト層が作り出されます。

炭化層は未熟成香を減少させる効果が期待できるので、焦がすことによりウイスキーの香りをより完成度の高いものに近づけることが可能です。

トースト層のフレーバーにはキャラメルと似た成分が存在しており、その他にもトースト層には細かな風味を与える成分が存在します。

蒸留直後の無職透明の液体であるウイスキーのニューポッドは炭化層を分解してトースト層に浸透し、トースト層の風味がウイスキー全体に広がる仕組みです

ウイスキー樽の作り方について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。

代表的なウイスキー樽の作り方と材料となるオークについてご紹介

ウイスキーに甘い風味を与える成分「バニリン」

ウイスキー樽の木材にはタンニン(ポリフェノール)リグニンが含まれています。

リグニンは年月と共に分解され、バニラのような甘い風味を持つ成分であるバニリンに変化します。

蒸留直後のニューポッドの状態では無色透明のウイスキーが琥珀色に変化する理由は樽材から溶け出したタンニンが原因です。

本来であれば時間をかけてリグニンは分解されますが、チャーによって樽を焦がすことでリグニンが分解され、バニリンが溶け出しやすくなります

バーボンウイスキー用の樽は焦がすことでバニリンが原酒に影響を与えやすくなり、よりバニラの風味が強いバーボンウイスキーができる成分の変化を発生させています。

チャーとトーストの違い

同じ酒樽を熱するチャーとトーストですが、チャーは直火で加熱し、トーストは遠火の遠赤外線で熱する点に違いがあります。

チャーは主にバーボン樽などのウイスキー樽、トーストはシェリー酒も含むワイン樽に使用されます。

時間的効率としては直火で加熱するほうが処理速度は早いですが、炭化層はトーストのほうが深くなりやすいです

炭化層が深いほど樽の成分が溶け出しやすくなるので、樽の風味が熟成によって反映されやすくなります。

ただし、チャーは木香を抑える役目を果たしており、先ほど解説した通りリグニンをバニリンに分解する作用も期待可能です。

バーボン樽はワイン樽と比較すると小さい樽であるため、木香の影響を受けやすくそのまま熟成させれば木香が強くなりますが、チャーを施すことで木香を抑えて香りのバランスを整えています。

チャーとトーストを比較するとトーストのほうが優れている部分もありますが、チャーという過熱方法がバーボンウイスキーに非常に適していることからこの過熱方法が選ばれているのです

チャーの焼き加減によって熟成の効果が異なる

チャーとトーストの違いについて解説しましたが、同じチャーでも焼き加減が主に3種類あります。

  • ライト
  • ミディアム
  • アリゲーター(ヘビー)

それぞれ詳しく解説します。

ライト

ライトはチャーの中でも強度が最も低い焼き加減を指します。

こちらの焼き加減では木香を抑える働きが弱くなるので、木材の香りを付与しつつウイスキーに付与される風味も損ねない絶妙なバランスが必要です

また、タンニンの溶け出しが非常に遅くなり、ウイスキーに色がつくにも時間がかかるので、長期熟成に向く焼き加減になります。

ミディアム

ミディアムはチャーの焼き加減の中でも中間にあたります。

バニラの風味も引き立てながら、樽材が持つ香りや風味も付与されるので複雑な味わいになりやすいです

ただし、成分の分解には時間を要するため中長期での熟成が必要になる焼き加減になります。

アリゲーター(ヘビー)

ヘビーはは多くのバーボン樽で採用されている最も強い焼き加減であり、樽の内側がワニの表皮のようになることから、アリゲーターと呼ばれることが多いです

多くのバーボンウイスキーの香りに木材を焦がしたスモーキーな匂いがするのはアリゲーターによる強い過熱が原因になります。

この樽を焦がした香りが、バーボンウイスキー特有のバニラやハチミツの風味を引き立てています。

成分の分解が早いため、短期熟成が可能な加熱方法です

アードベッグ アリゲーター

バーボンウイスキーに一度使用された樽は、近年ではスコッチウイスキーの熟成に再利用されています。

アリゲーター・チャーによる過熱処理がされたバーボン樽で熟成させたウイスキーには「アードベッグ アリゲーター」があります。

バーボンウイスキーの熟成に一度だけ使用されたファーストフィル・バーボン樽を使用。

アードベッグにアリゲーター特有の木材を焦がした香りとバニラのような甘みを付与しています。

アイラウイスキーの1つであるアードベッグはピート香由来のスモーキーな香りが強いウイスキーとして知られていますが、アリゲーター・チャーのバーボン樽の強い個性とかみ合っており、ピート香に抵抗がない方であればバニラの風味カステラの焦げ目のような甘い味わいが堪能できることでしょう。

まとめ

ウイスキー樽を焦がす理由は、樽の成分を溶け出しやすくすることで短期熟成でもウイスキーの香りを風味を高めることにあります。

バーボンウイスキーやバーボン樽で熟成させたウイスキーが強いバニラの香りと風味を持つようになる理由はチャーという樽を焦がす製造工程にあるのです。

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