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ウイスキーは瓶の中で熟成しないの?おいしく変化させる方法は?

2021.09.13 / 最終更新日:2021.09.13

手ごろな価格で買えるウイスキーが、購入後に瓶の中で熟成して、長期熟成の風味になったらいいのにと思ったことはありませんか。もし、瓶の中で熟成が進むのであれば、安いうちに購入しておいて、長期間熟成させてから飲んだ方がよさそうです。

開栓せずに、しばらく置いてから飲んだら風味がよくなっていたという声もたまに聞かれます。それは果たして瓶の中で熟成が進んだからなのでしょうか。この記事では、ウイスキーが瓶内熟成するのか否か、ウイスキーをおいしく変化させる方法はあるのかということについて解説します。

この記事のポイント

  • ウイスキーの熟成に使用される物と瓶による熟成が可能かを解説
  • 開栓していないウイスキーの味が変化する理由を解説

ウイスキーを熟成させるものは何?

ウイスキーの瓶内熟成が可能かどうかを考える前に、ウイスキーが蒸留酒であることを今一度理解しておきましょう。お酒には大きく分けて、醸造酒蒸留酒の2種類があります。

醸造酒は、日本酒、ワイン、ビールなど、蒸留酒はウイスキー、焼酎、テキーラなどです。醸造酒は、穀物や果実などを酵母の力でアルコール発酵させたもので、そのままの状態で発酵させる場合と、一旦原料を糖化させてから発酵させる場合があります。酵母以外にも乳酸菌など微生物の力によって発酵が進むのが醸造酒の特徴です

それに対して、蒸留酒はいわば醸造酒を蒸留したものです。一旦原材料から醸造酒をつくり、それに熱を加えると揮発成分が蒸発するので、その成分を冷やして液体に戻します。醸造酒に含まれるアルコール分も揮発成分です。蒸留の工程を加えることで、アルコール度の高いお酒に仕上がります。ウイスキーの場合、一定期間木樽で熟成させた後、瓶に詰めて出荷するというのが一般的な流れです。ウイスキーは腐る心配がなく、賞味期限も決まっていません。

さて、ここで考えなければならないのは、ウイスキーは未開栓なら、何年後も同じ味を楽しめるものとして出荷されているという点です。ウイスキーは、ワインや日本酒などの醸造酒と異なり、蒸留の過程で何度も繰り返し加熱しています。

原料となる醸造酒に含まれていた酵母や微生物の働きはストップしていると考えて良いでしょう。ところが、ウイスキーは蒸留後すぐに飲むことはありません。木樽に移して熟成させます。ここでウイスキーを熟成させるのは木樽の力です。木樽の成分がウイスキーの色を変え、香りや風味を変えます

では、ガラス瓶にその力があるでしょうか。ガラスの成分が溶け出してウイスキーの風味に影響するということはないでしょう。つまり密封状態のガラス瓶の中ではウイスキーが熟成することは理論上ないのです

未開栓のウイスキーの味が変化する理由は?

理論上、瓶内でウイスキーが熟成することはないにもかかわらず、開栓せずに置いておいたウイスキーの味がまろやかになっていたという話があるのはなぜなのでしょうか。

それは、正しい保管方法を取っていても、瓶と栓との間にできたわずかな隙間から酸素が侵入することがあるからです。非常にゆっくりと酸化が進むことによって、劣化ではなく熟成に近い変化になっていると考えられます

これは、あくまでも正しい保管方法、保管環境が前提での話です。よい条件が重なれば、熟成に近い変化があっても不思議はないという話にすぎません。正しい保管の仕方をしていれば、本来空気は瓶の中に入り込むことはないのですが、それでもわずかな隙間から空気が入ってしまうような場合は、木樽の中で熟成するときのようにゆっくり酸化が進むこともあり得るということです。

保管状態や保管環境が悪い場合、瓶の中に侵入する空気の量が多く、揮発するアルコールの量も多いので、決して熟成といえるような風味の変化はしないでしょう。下手をすると、ウイスキー本来の個性を壊すような結果になりかねません

購入したときの状態のまま、結果を時間の経過だけにゆだねるようなやり方で熟成させようとしても無理です。狙ったような味の変化を生み出すことは不可能だと考えた方がよいでしょう。

開栓後の瓶内熟成はあり得ない

未開封のウイスキーを瓶内で狙ったような味に熟成させるのは難しいことがわかりました。では、開栓後のウイスキーはどうでしょうか。酸化は進みますが、狙ったような風味に熟成をさせることはやはり無理でしょう。

アルコール度数が高いウイスキーは、賞味期限の記載がないほど長く飲める状態を保つことができますが、時間の経過と共に味わいは変化します。

空気に触れれば酸化が進み、アルコールなどの揮発成分も蒸発して抜けていくでしょう。未開封で瓶と栓との間にできたわずかな隙間から空気が入り込んでいる状況とは酸化の速度が全く違います。開栓後はかなり多くの部分が空気に触れている状態ですから、劣化はしても熟成といえる状態になるとは考えられません

ウイスキーをおいしく変化させるオークボトル

ガラス瓶に詰めた状態では、ウイスキーを熟成させることは難しいという話をしました。では、他の材質の瓶に詰め直した場合はどうなのでしょうか。実際、オーク材でできている保存用の瓶が販売されています。熟成年数が不足していると感じられるお酒を詰めて数時間から二日程度置くと、味わいに深みが出るというものです。

樽よりもサイズが小さいボトルなら、中に入れたお酒に風味が移る時間を短くできるだろうという発想のもとにつくられています。中に入れたお酒が瓶と触れる割合が多ければ短時間で樽熟成と同じ効果が得られるだろうという考えです。また、このオークボトルは、瓶の内部が工夫されています。ウイスキー樽などと同様、内部を焼き焦がしてある点が重要なポイントです

ただし、ウイスキーなどお酒を注ぎ入れる前にスウェッティングという下準備をしておかなければなりません。購入したばかりのオークボトルは乾燥した状態なので、そのまま液体を入れると、木目の隙間から染み出てしまいます。使用する前に十分に水分を含ませ、木を膨張させたうえで使うことが大事です。このスウェッティングという作業には丸一日かけます。

また、スウェッティングのために水を入れると、木目の隙間から水が染み出てきます。内部を焼き焦がしているため、茶色っぽい水が出てくると考えておいた方がよいでしょう。

色がついても問題がないものの上にボトルを置くようにします。中に入れた水を捨てると、中から木の粉のようなものも出てくるので、何度か水を入れ替えた方が気持ちよく使えるでしょう。スウェッティングしても水が漏れてくる場合は、付属のワックスを表面に塗るようにします。

オークボトルは、中に入れるお酒の種類に指定はないのですが、醸造酒とはあまり相性が良くありません。逆に、蒸留酒とは相性がよく、とくにウイスキーとの相性は抜群です。蒸留酒を入れる際の目安は24時間~48時間が目安ですが、24時間置いた場合と48時間置いた場合とではまるで味も香りも舌触りも違います。48時間置くことで、熟成度の増したまろやかな味わいに変わるので、試してみるとよいでしょう。

ただし、オークボトルの使いまわしはおすすめできません。先に入れたお酒の風味が後のお酒に移ってしまいます。お酒1種類に対してオークボトルを1本用するようにしましょう。また、洗う際に洗剤を使うことも厳禁です。洗剤成分が木に染み込んでしまい、期待したような味に仕上がらなくなります

常にお酒が入った状態にしておくのがベストです。空にする際には、水とお湯でよくすすいで、乾燥させます。次に利用する前に、再度スウェッティングすることで再利用可能です。

未開栓でも正しい保管を心がけることが大事

ウイスキーは未開栓でも保管している間にわずかな隙間から瓶の中に空気が入り込んで味が変化する可能性があります。お気に入りのウイスキーを長くおいしく飲むためには、正しい保管がとても重要です。

瓶内熟成は期待できなくても、正しい保管さえ心がけておけば、万が一わずかな空気が瓶の中に入り込んだとしても、おいしく飲める状態を保てます。

ウイスキーの保管方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。

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