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「ジャパニーズウイスキー」の定義とは?

2022.07.16 / 最終更新日:2022.07.16

 日本洋酒酒造組合が制定した「ジャパニーズウイスキー」の表示に関する自主基準が施工され1年以上経ちましたが、どのボトルが該当するのか分かりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか?

 ここでは、「ジャパニーズウイスキー」の表示に関する自主基準が制定された背景や内容、今後の課題を解説していきます。

この記事のポイント

  • 酒税法におけるウイスキーの定義とジャパニーズウイスキーの表示に関する自主基準を解説
  • ジャパニーズウイスキーの該当ボトルを一覧形式で紹介

酒税法でのウイスキーの定義

 まずは、酒税法でのウイスキーの定義をみていきましょう。ポイントは3つです。

  1. 発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの(当該アルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のものに限る)
  2. 発芽させた穀類及び水によって穀類を糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの(当該アルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のものに限る)
  3. 1又は2に掲げる酒類にアルコール、スピリッツ、香味料、色素又は水を加えたもの(1又は2に掲げる酒類のアルコール分の総量がアルコール、スピリッツ又は香味料を加えた後の酒類のアルコール分の総量の100分の10以上のものに限る)

 酒税法でのウイスキーの定義には、生産場所や熟成に関しての記載がない為、外国産原酒をボトリングしジャパニーズウイスキーとして発売する事が可能です。また、木樽で熟成していない物や熟成年数の未熟な物でもジャパニーズウイスキーとして発売する事も可能です。更に③にある様に、ウイスキー10%に対し醸造アルコールやスピリッツを90%加えた物でも、ジャパニーズウイスキーとして発売できてしまうのです。

 2001年には『ウイスキーマガジン』でニッカの『シングルカスク余市10年』が世界一に、2003年には『インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ2003』でサントリーの『山崎12年』が日本初の金賞を受賞。以降、世界的に権威のある品評会で日本企業のウイスキーの受賞が続き、世界5大ウイスキーの1つに数えられるまでになりました。

 しかし、日本の酒税法には、スコッチやアイリッシュ、アメリカン、カナディアンにある生産場所についての規定が無く、混乱を招いていました。そこで、日本洋酒酒造組合が「ジャパニーズウイスキー」の表示に関する自主基準を制定する事となったのです。

日本洋酒酒造組合とは?

 「ジャパニーズウイスキー」の表示に関する自主基準を制定した日本洋酒酒造組合は、日本国内で唯一の洋酒メーカーの団体です。酒造免許を有する90社(2022年1月時点)が加盟しており、サントリースピリッツ株式会社の代表取締役社長の神田秀樹氏が理事長を務めています。年会費は2万円で、大手メーカーだけでなくクラフト蒸溜所まで多くのウイスキーメーカーが加盟しています。

 今回の「ジャパニーズウイスキー」の表示に関する自主基準の制定に際しては、加盟している企業の中でも特にウイスキー業界を牽引している5社でワーキンググループを編成し、約4年間にわたり議論がなされました。その結果、2021年4月1日から、以下の基準が施行される事となりました。

「ジャパニーズウイスキー」の表示に関する自主基準、4つのポイント

 「ジャパニーズウイスキー」と表示する場合には、下記の要件を満たす必要があります。

特定の用語 製法品質の要件
ジャパニーズウイスキー 原材料 原材料は、麦芽、穀類、日本国内で採水された水に限ること。なお、麦芽は必ず使用しなければならない。
製法 製造 糖化、発酵、蒸留は、日本国内の蒸留所で行うこと。なお、蒸留の際の留出時のアルコール分は95度未満とする。
貯蔵 内容量700リットル以下の木製樽に詰め、当該詰めた日の翌日から起算して3年以上日本国内において貯蔵すること。
瓶詰 日本国内において容器詰めし、充填時のアルコール分は40度以上であること。
その他 色調の微調整のためのカラメルの使用を認める。

参考:http://www.yoshu.or.jp/statistics_legal/legal/pdf/independence_06.pdf

 大きく分けると、ポイントは4つです。

  1. 原材料は麦芽、穀類、日本国内で採取された水に限ること。麦芽は必ず使用すること。
  2. 糖化、発酵、蒸留は日本国内で行うこと。
  3. 700リットル以下の木樽で、3年以上、日本国内において貯蔵すること。
  4. 日本国内で容器詰めすること。

まずは1。麦芽を必ず使用するとした事により、米などを原料とし樽熟成した焼酎は「ジャパニーズウイスキー」と表示する事が出来なくなります。

 次に2。これにより、外国産の原酒をブレンドしたものは「ジャパニーズウイスキー」と表示する事が出来なくなります。

 3によって、樽での熟成をしていなかったり、3年未満の熟成の物を「ジャパニーズウイスキー」と表示する事が出来なくなります。また、スコッチではオーク樽での熟成と定義されていますが、「ジャパニーズウイスキー」では木樽とする事で、桜や杉、檜、栗などの日本ならではの木材での熟成の可能性を追求出来るようになっています。

 最後に4。容器詰めの際には加水する事が多いですが、これを日本国内と限定する事によって、加水する際の水も、自動的に日本国内で採取された水となります。スコッチでは容器詰めの場所は限定されていないので、ここに「ジャパニーズウイスキー」ならではのこだわりが見て取れます。

 これらの基準は、ワーキンググループ5社にとって、都合が良いだけの内容ではありません。全社、外国産原酒も用いたワールドブレンデッドウイスキーを展開しており、それらが「ジャパニーズウイスキー」と表示する自主基準に満たない事から、売上の低下も懸念されるのです。ウイスキー業界を牽引している5社が身を挺して制定した事からも、守られる価値のある基準と言えるでしょう。

課題はグレーンの「ジャパニーズウイスキー」の供給不足

 「ジャパニーズウイスキー」の表示に関する自主基準は、グレーンウイスキーにも適用されます。しかしながら、現在、国内で3年以上の熟成を経たグレーンウイスキーを製造しているのは大手メーカーのみ。ブレンデッド「ジャパニーズウイスキー」は、大手にしか造れないのが現状です。

 クラフト蒸溜所では生産量が限られているだけでなく、ポットスチルも1対しかなく原酒の造り分けにも限界があります。そうした事からワールドブレンデッドウイスキーを発売し、売上の確保だけでなく、ブレンド技術の向上にも繋げてきた経緯がありました。

 「ジャパニーズウイスキー」だけの需要が高まると、シングルモルト「ジャパニーズウイスキー」を売っていくしかない状況になり、本当は10年熟成を待ちたい原酒も、3年でボトリングして販売せざるおえない事態が懸念されます。

 グレーンの「ジャパニーズウイスキー」が大手メーカーからクラフト蒸溜所へ供給され、ブレンデッド「ジャパニーズウイスキー」として発売が出来る様になれば、長期的に見て「ジャパニーズウイスキー」の品質向上に繋がるのではないでしょうか。

「ワールドブレンデッドウイスキー」との共存

 ひとつ強調したいのは、決して、外国産原酒をブレンドしたワールドブレンデッドウイスキーが粗悪な商品では無いという事。世界5大ウイスキーをブレンドしたサントリーの『碧Ao』や、ベンチャーウイスキーで一番の販売数を誇る『イチローズモルト&グレーン ワールドブレンデッドウイスキー』通称ホワイトラベルなど、外国産原酒とのハーモニーが素晴らしいウイスキーも沢山あります。元々、日本はスコットランドと違い、蒸溜所同士の原酒交換の習慣が無く、外国産原酒とのブレンドによって幅広い風味のウイスキーを造ってきました。日本産ではないからといって、粗悪な商品というわけでは無いのです。

 「ジャパニーズウイスキー」の表示に関する自主基準は、あくまでも、木樽で熟成していない物や、ウイスキー10%に対し醸造アルコールやスピリッツを90%加えた物がジャパニーズウイスキーと名乗るのを抑制する為のものとして、消費者に浸透する事が望まれます。

 2023年には、日本でウイスキー造りが始まり100年になります。「ジャパニーズウイスキー」の表示に関する自主基準は、次の100年の「ジャパニーズウイスキー」の発展に貢献する一助となるでしょう。

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