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ウイスキーは樽で決まる!樽に使われる木材の種類と味や香りの違い

2021.08.28 / 最終更新日:2022.05.21

ウイスキーの原酒は無色透明で、そのまま飲むと強いアルコールの刺激が際立ち、荒々しい味で飲みにくさがあります。

しかし、お店で販売されているウイスキーは美しい琥珀色で独特の深みのある芳醇な味と香りを味わえます。

ここまでウイスキー原酒を変身させているのはひとえに「樽」の力が大きいです。

樽に原酒を入れて熟成させる工程がウイスキーの味を作るといってもいいでしょう。

重要な工程の一手を担う樽ですが、その素材は何でもいいわけではありません。

樽はウイスキーの貯蔵・熟成のための用途は勿論ですが、木の種類によって香りや味わいにも影響を与えるのでウイスキー生産者は樽選びに余念がありません。

今回は樽に使われる木材について解説いたします。

この記事のポイント

  • 木材がウイスキーの樽になるまでのこだわりの工程とは
  • ウイスキーの味わいが深まる熱処理とは

1.ウイスキーの樽に使われる木材の種類

ウイスキーの樽にはオークという種類の木が使われています。

オークは日本語では楢の木といいます。

ブナ科の広葉樹でで家具などにも使われています。

オーク材が樽に使われている理由は以下のような理由です。

オーク材が樽に使われている理由

  • 防水性・耐久性が優れている。
  • 樽の味わいに貢献する香味成分が多く含まれている。
  • 樽の形に作りやすく、大きさも丁度良い。

オークは国内外でも種類があり、使われているオークの種類によってウイスキーの味や香りの個性も違います。

この個性の違いはウイスキーの香味成分や色素を形づくるタンニンなどが溶けだす量がオークの種類によって異なるためです。

タンニンは熟成直後の数年で分泌が多くなり、その後はかなり緩慢となります。

木材の樽香を知ると、ウイスキーの香りでどんな樽を使っているかイメージできたりもします。

1-1.ヨーロッパオーク(スパニッシュオーク/コモンオーク)

ヨーロッパオーク(スパニッシュオーク/コモンオーク)
香り 木の樹脂・ドライフルーツ・甘くコクのある蜂蜜を思わせる芳醇な香り
銘柄 山崎・バランタイン

ヨーロッパで自生しているオークです。

その中でもコモンオークは2大オークと呼ばれるうちの一つです。

アメリカンオークと比較すると、耐水性が悪く、樽の成形の際には工夫が必要です。

タンニンの量が多く、ホワイトオークの倍位あるため、単一で使うには口が乾くような刺激を伴うため、ウイスキーの熟成ではシェリーカスクフィニッシュで使用されることが多いのが特徴です。

カスクフィニッシュとは樽熟成後に別の樽に移し替えて短期間熟成する製法で、風味づけのために用いる手法です。

グレンアラヒーとは?種類や味わい、おすすめの飲み方

1-2.ホワイトオーク

ホワイトオーク
香り バニラ香やココナッツのような甘い香り
銘柄 バーボン・テネシーウイスキー

ホワイトオークは北アメリカ原産ということでアメリカンオークとも呼ばれています。

木には導管という水分や養分を伝導するための管が沢山つまっていますが、導管の中の繊維組織である「チロース」の密度が、フレンチオークよりも高いので、木が水分を通しにくい利点があります。

ウイスキーが樽から液漏れしにくいということですね。

この特徴からホワイトオークは1本の木から使用できる部分が多く、板材を採取しやすいので比較的安価です。

タンニン量はヨーロッパオークと比較すると少な目です。

1-3.セシルオーク

セシルオーク
香り スパイシー・草花を感じさせる香り。
銘柄 グレンリベット・グレンアラヒー

セシルオークは2大オークの一つで、フランスを中心に樹齢120年~200年程度のオークを樽材として加工しています。

ヨーロピアンオークの1種なので、同様にホワイトオークよりは耐水性は落ちます。

タンニン量が多く、ワイン・コニャックの樽に使用されてきましたが、近年ではスコッチウイスキーにも使われています。

1-4.ミズナラ(ジャパニーズオーク)

ミズナラ(ジャパニーズオーク)
香り 白檀(びゃくだん)や伽羅​(きゃら)のようなお線香感じさせる香り。
銘柄 シーバスリーガル ミズナラ・イチローズモルト

ミズナラは北海道やロシアなどの寒い地域で生育されますが、木目の美しさだけでなく、丈夫で良質な北海道産のミズナラは「ジャパニーズオーク」と呼ばれ、貴重です。

その名の通り水を多く含んでいて、燃えにくいという特徴があります。

樽材のタンニン成分がウイスキーに染み渡るのにおよそ12年~50年ほどの時間がかかり、長期熟成が必須となっています。

水を吸収しやすい材質のため、樽加工にも技術が必要でミズナラのウイスキーは非常に高価です。

しかし、唯一無二の貴重な香りと味わいを持つミズナラウイスキーはファン垂涎のお酒なのです。

以下の記事でもミズナラ樽のご紹介をしています。

ミズナラ樽熟成ウイスキーが人気な理由とは?おすすめの銘柄と特徴
シーバスリーガルとは?種類や味わい、おすすめの飲み方

2.木材の製材方法と乾燥工程

オークの木が高品質なウイスキー樽に変身を遂げる、料理でいえば下ごしらえとも言える2つの工程があります。

まずは、木材の製材方法です。

木材の切り出し方によって、ウイスキーが樽から染み出してしまう液漏れを防ぎます。

もう一つが乾燥工程です。

こちらは液漏れの予防もありますが、生木の香りがウイスキーに移るのを防ぐためでもあります。

2-1.木材の製材方法

木材は「柾目取り(まさめどり)」と「板目(いため)取り」いう方法で板を切り出す方法があります。

木材の製材方法
柾目取り 木の中心から表皮に方に向かって放射状に板を切り出す。ウイスキー樽は柾目取り
板目取り 丸太を水平に切り出す。

ウイスキー樽は柾目取りなので、導管や繊維組織が板の表面に現れにくくなります。

前述にもご説明した導管や繊維組織は水分や養分を通すはたらきをしますが、板目取りのように表面に導管が出ている割合が多いと樽加工した時に液漏れしやすくなってしまいます。

柾目は丸太の中心部からしか取れず、貴重なため板目より値段は高いです。

家具用としても、木目の美しいオーク材の柾目板は昔から人気があります。

2-2.木材の乾燥工程

切り出した木材はしっかりと乾燥させないと貯蔵中に乾燥が進んで収縮して、樽の歪みを誘発したり、ひびが入るなどして樽の木材の間にすき間を作らせて液漏れしてしまう危険性があります。

また、熟成の過程にも影響を及ぼし、ウイスキーの品質低下を招く恐れがあります。

生木の香りが移ったり、ウイスキー独特の芳醇な香りを持つ、雑味のないウイスキーは作り出せなくなります。

これは木材の乾燥が足りないと、ウイスキーの呼吸に過不足が生じるためです。

ウイスキーの呼吸については以下の記事をご参考ください。(2-2.ウイスキーの呼吸)

樽の香りが強いウイスキーとは?樽の種類と熟成について

2-3.キルン乾燥と天日乾燥

木材を乾燥させる方法は主に2種類で、「キルン乾燥」と「天日乾燥」です。

2-3-1.キルン乾燥

キルンとは「釜」や「炉」という意味を表す英語です。

専用の機械で焼き上げて乾燥を行い、多くの樽がキルン乾燥で作られています。

空気乾燥よりもはるかに速く、水分を多く除去するため手軽で早いですが、割れが入ったり均一に乾燥しないのが欠点です。

バーボンウイスキーの樽に使用している板なども殆どがキルン乾燥ですが、半年前後で乾燥が終わります。

2-3-2.天日乾燥

自社で樽の成形を行うシングルモルトウイスキーの「山崎」や「グレンモ―レンジ」は2年という長い期間天日干しするというこだわりがあります。

「山崎」はミズナラの木を様子を見ながら何度も積み替えをして天日干しにしているそうで、これを行うことで木材に含まれる水分の含有率を50パーセントから20パーセント以下に下げる効果を得られるということです。

グレンモ―レンジ」はアメリカ・ミズーリ州で育ったホワイトオークを材に使っています。

熟成による樽の香味成分などが最大限に溶出できる期間を研究し続けた結果、2年間の天日干しに辿り着いたということです。

天日干しには手間と時間はかかりますが、天日でしっかりと乾燥させた樽材は丈夫かつ熟成時にたっぷりと呼吸するので、ウイスキーの味わいに丸みを持たせ、バニラ・クリームブリュレのような甘く豊かな香りをつけることができるのです。

3.樽の熱処理で味わいが深まる

樽が完成したら、料理でいうところの味付けといえる樽の熱処理です。

そのままでは樽材の木質成分は活性化せず、ウイスキーの個性は弱くなります。

ウイスキー原酒がオーク材に浸透して樽の成分が溶出しやすくするように樽に熱処理を施します。

3-1.チャーリングとは

 

樽の熱処理のことをチャーリングといいます。

樽の内部に加熱処理を行うのですが、内側を強く焦がすことで木の繊維質が化学反応を起こすことを目的としています。

チャーリングは火をバナーなどを使って直接樽内部にあてます。

これがオークの持っている個性を原酒に与えやすくする効果をもたらし、一方で木材独特の臭みは抑制する効果もあります。

また、加熱処理することで、木の成分を活性化させて、甘いバニラやアーモンドのような香りを生成するので、いいことづくめといえます。

樽の熱処理には他に「トースティング」もありますが、主にワイン樽に使われる熱処理方法です。

こちらは遠火の遠赤外線で焼き付けます。

トースティングは熱処理が短時間で済むというメリットはありますが、炭化の深さがチャーリングより浅く、樽の成分が溶出しにくくなるというデメリットがあります。

3-2.焼きの強度

チャーリングの焼きの強度は主に3段階あります。

チャーリングの時間によってチャーレベルが決められますが、一番長くても1分に満たない位となっています。

チャーレベルは樽製材所によって違いがあるので、断定できるものではありませんが、一般的な位置づけをご紹介します。

3-2-1.ライトチャー

約20秒程度のライトチャーは熱せられた木の甘やかな、カラメルのような香りが特徴です。

木にはヘミセルロースという多糖成分があるのですが、これがチャーリングによって分解されて甘い香りになるのです。

長期熟成の樽向けに使われることが多いです。

3-2-2.ミディアムチャー

チャーレベルで一番多く使用されているのがミディアムチャーです。

バニラの香りの強い、アーモンドやキャラメルなどの香り豊かな味わいをウイスキーにもたらします。

3-2-3.アリゲーターチャー

 

樽内部をワニ革に似た表面のようになるまで強く焼きつけることからこのような呼び名となっています。

バーボンウイスキーの樽はアリゲーターチャーを使用しています。

ワニ革のようにヒビが入っているため原酒と樽が触れ合う面積も大きいので、木の持つスモーキーさとバニラや蜂蜜の甘い香りが融合して独特の味わいをウイスキーに与えます。

3-3.樽の再生利用

樽は繰り返し使用すると香りの成分であるバニリンやタンニンなどのポリフェノール・色素成分が少なくなるなど、熟成機能が悪くなります。

そこで、樽を活性化して熟成機能を復活させるために再度熱処理を加える処理を行います。

樽の内面を削って、焦がし、表面を炭化させることをリチャーリングといいます。

リチャーリングでは樽の熟成機能は約60%~80%程度復活するといわれています。

3-3-1.バランタイン ハードファイヤード

『バランタイン ハードファイヤード』はリチャーリングを進化させた使い方でウイスキーに新しい味わいを与えました。

樽の中にアルコール分が残ったままの状態でリチャーリングを行う手法を「ハードファイヤーリング」と呼ぶのですが、アルコールで激しく炎が上がることからこのネーミングがつけられているようです。

ハードファイヤードというネーミングからタフで骨太な強さを感じさせますが、実際は全く逆で味わいはバニラ・赤リンゴや洋ナシのような果実の甘い味と香りが際立ち、後味に燻製の香りを楽しめる一品です。

内側を激しい炎で焦がすことが香味成分の増幅に繋がり、深みのある味わいと強い個性をウイスキーに与えました。

4.まとめ

木材を樽にするのは単なる入れ物作りではなく、ウイスキーの味を左右する重要な工程をいくつも踏んでいました。

1個の樽を作るのに多くの人の手と歳月がかかっていることを考えると、リチャーリングの手法はコストも抑えられ、エコで地球に優しいですね。

ウイスキー業界は他にも環境に配慮した樽材の再生利用を推進しており、使えなくなった樽材を庭園用家具や建物の材料として使うなど創意工夫に余念がありません。

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